前述の自治体幹部は「空港会社だけでなく、電力会社などインフラ系企業で働く若手を見ていると、自治体に近い公共性に対する覚悟を感じる。それが良い方向に働くことばかりではないかもしれないが、あまりにも民間企業然とした考え方は、受け入れ難いのではないか」と、退職者たちの気持ちをおもんばかる。

 かつて取材した国交省の幹部は「役人の発想の限界を打破して欲しい」と、空港民営化に期待を寄せていた。筆者も同様で、民営化そのものを否定する気はなく、仙台空港のように地の利のなさに苦しみながらも、地元と活性化の道筋を模索する動きも見てきた。

 ただ、空港民営化に対する問題意識は世界の航空関連業界に広がりつつある。

 「われわれの調査では、民営化された各国の空港で、効率性や投資水準が向上していないことがわかった。民営化に、すべての答えがあると仮定するのは間違いだ」。6月上旬、オーストラリア最大の都市、シドニー。世界的な航空業界団体「IATA(国際航空運送協会)」の年次総会で、アレクサンドル・ド・ジュニアック事務局長兼CEO(最高経営責任者)はこう発言した。各国政府が不十分な検討で空港民営化を進めた場合、長期的に空港の社会的な便益が損なわれる可能性があると、警鐘を鳴らしたのだ。

 翻って日本。空港を擁する自治体の首長から聞こえてくるのは「我も我も」という民営化の話ばかりだ。ただ、民営化で先行した関空や伊丹の例からは、空港運営において営利追及と公共性確保のバランスを取ることの難しさが浮かび上がってくる。航空会社や自治体など周囲から利益第一主義に見えてしまうKAPの経営姿勢について、十分な検証と関係者による本質的な議論が必要な段階にきているのではないだろうか。

 そして、空港の運営権者を選定する際、公共財を扱う経営者の資質を厳しく見る必要がある。

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