こうしたデータから見ると関空の民営化は、確かに「成功」の部類に入るかもしれない。だが筆者が昨年指摘したような関空の問題点が、改善されたとの声は国内や海外いずれの航空会社からも聞こえてこない。

 むしろテナント企業などからは、放置しておけば関空のプレゼンス低下につながりかねない話ばかりが耳に入ってくる。例えば以前から航空会社などが懸念していた、空港地下に集中する重要施設の冠水対策は、民営化後も後回しになっている。あるテナント企業に対しては、関空にとどまる必然性が薄れるほどの法外な値上げ提案がなされたという。

 後述する伊丹のターミナル改修でも、民営化前に計画されていたプランと比べ、空港が利用者から求められる利便性を重視するよりも、商業施設としてのにぎわい創出に舵が切られた。関空の第1ターミナル改修に至っては、今年3月としていた計画概要の発表すら到達できていない。

 航空会社や自治体などからも関空に対する様々な意見を集約していくと一つの問題が見えてくる。それは、営利企業とは対極にある「公共性」という概念の欠如だ。KAPの経営陣からも「公共性」という言葉は出てくるが、どうやら航空会社や自治体の考えるものとはかけ離れているようだ。

 昨年末、KAPの山谷佳之社長に「訪日需要が大きく落ち込んだ際、どのように対処するか」と尋ねたことがある。山谷社長は「短期的な落ち込みは怖くないが、長引くと問題だ。コンセッション(運営権の民間への売却)も継続できないだろう。国にお返ししなければならなくなる。国もコンセッションを解除するだろう」と応じた。

 こうした言葉から見え隠れするKAPの経営姿勢に、違和感を感じる関係者は少なくない。複数の航空会社の幹部が異口同音にこう指摘する。「何かあったら国に運営権を返すような気構えでは、安心して就航し続けることができない」。

クレーン船による橋桁の撤去作業が進む関空連絡橋
クレーン船による橋桁の撤去作業が進む関空連絡橋

 別の幹部も「山谷社長は“民間の知恵”と、ことあるごとに言っているが、出てくるのは商業施設の話ばかり。ターミナルも不動産投資のような改修の話にとどまり、将来像が見えてこない」と、飛行機が乗り入れられるショッピングモールのようになりつつある関空と伊丹の現状に危機感を抱く。

 新路線の誘致など関空が民営化した後も進むプロジェクトの多くは、国が出資する新関西国際空港会社の時代にスタートしたものだ。そして、現場を支えているのは、民営化前から閑古鳥が鳴く関空不遇の時代を支えてきた社員たちだ。

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