航空業界は間もなく、一年の中で大きな節目を迎える。10月の最終日曜日に夏ダイヤから冬ダイヤへ変わり、このタイミングで新路線就航などの話題が相次ぐからだ。国内の航空会社で最高の売上高を誇る全日本空輸(ANA)も例外ではない。

 長らく懸案だった羽田空港の昼間時間帯発着枠の配分が決まり、ドル箱路線である北米路線が、いよいよ羽田から就航する。既に欧州路線は2014年3月30日に、羽田国際線発着枠の二次増枠分を活用して、ロンドンやパリ、ミュンヘンといった主要路線が羽田から就航しており、今年の10月30日からは北米路線が羽田から就航する。名実ともに羽田空港が日本の玄関口に返り咲く。

 特にANAは、先の発着枠の配分で、5枠中3枠を獲得した。既存の発着枠から引き継がれるものを含めると合計6枠あるもののうち、ANAが4枠、JALが2枠となる計算だ。そのうえ、JALは新規就航路線を設けることが国に認められず、深夜便のサンフランシスコ線とホノルル線を、昼間便に移し替えるだけなのに対して、ANAは新たに羽田からニューヨーク線とシカゴ線を新設する。

 このように、ANAに有利な発着枠の傾斜配分がなされる背景には、国土交通省が2012年8月10日に出した「日本航空への企業再生への対応について」という文書(いわゆる8.10ペーパー)の存在がある。2010年に破綻したJALが、当時の民主党政権下で再生を果たしたものの、両社間に生じた格差を是正するのが目的で、ANAが自民党政権に強く働きかけて出されたものだ。

 この文書では、JALの中期経営計画最終年度となる2016年度末の2017年3月まで、新路線開設や新規の大型投資について、国交省は事実上認めていない。それゆえ、10月の米国路線用となる発着枠配分は、ANAに傾斜配分されたのだ。

 今年3月3日、ANAは国際線の定期便就航から30周年を迎えた。1986年7月16日に就航した成田〜ロサンゼルス線が最初の路線で、18年後の2004年度に黒字化を果たした。そして今月9月1日の成田〜プノンペン線の開設によって、ANAの国際線ネットワークは41都市61路線に拡大した。

順調に路線を拡大しているが、様々なトラブルにも見舞われている(撮影:吉川 忠行)
順調に路線を拡大しているが、様々なトラブルにも見舞われている(撮影:吉川 忠行)

 順風満帆に路線を拡大し、成長に向けてアクセルを踏んでいるかのように見えるANA。だが一方では、今年に入って、様々なトラブルが起きている。予約システムの障害による大規模な欠航や遅延のほか、受託手荷物を積まずに出発したトラブルや、ボーイング787型機のエンジン不具合による国内線の一部欠航などだ。

 一見すると、いずれも原因はそれぞれ個別にあると考えられるだろう。だが相次ぐトラブルを受けて、利用者からは、「ANAは大丈夫なのか」という声が多く聞こえるようになった。なぜ、トラブルが続いているのだろうか。

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