国産初のジェット旅客機、三菱航空機の「MRJ」がなかなか日本を旅立てないでいる。
当初は、機体を製造する県営名古屋(小牧)空港から、気象条件などが飛行試験に適した米国の開発拠点、ワシントン州モーゼスレイクへ機体を持ち込む「フェリーフライト」を、8月中にも実現させる計画だった。しかし、飛行試験機は9月を迎えた今でも、小牧にある。
フェリーフライトのルートは小牧を出発後、給油のため新千歳空港に立ち寄る。その後はロシアのカムチャツカ半島と米国のアラスカを経て、モーゼスレイクのグラントカウンティ国際空港へ向かう北回りのルートだ。

三菱航空機は8月22日以降、機材点検などによって2度の延期を経て、8月27日昼に新千歳へ向けて出発。ところが新千歳へ向かう途中、空調システムを監視する機器の一部が故障したため、出発から約1時間後に小牧へ引き返した。
到着後に問題が起きた機器を交換。地上試験の結果も問題がなかったことから、翌28日昼に再度出発して新千歳へ向かったが、再び前日と同じようなトラブルが起きたことから秋田上空で引き返し、改めて原因を究明することになった。

同社は昨年9月、フェリーフライトの時期を今秋と定め、可能であれば夏に前倒し出来るよう開発を進めてきた。モーゼスレイクは飛行試験に適した天候であることや、離陸後すぐに飛行試験を始められることから、国土交通省の型式証明を取得するための試験を効率良く実施できる。
三菱航空機の森本浩通社長は「秋からだんだん気象条件が厳しくなる」と、開発中の機体を米国へ持ち込む上で、降雪などのリスクを極力避けたい考えを示している。実際、冬になれば出発地の小牧の天候が良くても、新千歳は大雪ということもあり得る。この場合、滑走路がすべりやすい状態で設計した通りに停止できるかなど、本来であれば飛行試験時に実施することを、フェリーフライトで行わなければならなくなってしまう。
三菱航空機は飛行試験に使用する機体を5機製造しており、このうち初号機から4号機をモーゼスレイクへ持ち込む。実績を積む上で、最初の機体だけでも天候が安定している時期に持ち込みたいところだ。
一方、このところMRJのセールスについて、難題に直面しているという話をよく耳にする。設計重量の超過やパイロット組合との取り決めなどで、北米市場での販売が難しいというものだ。確かに開発の進捗は決して芳しくないが、これらの話は問題点が正確に理解されていないことに起因しているのではないだろうか。
こうした問題よりも、MRJはプロジェクトを進めていく上で、改善していかなければならない課題が別にある。MRJが抱える真の問題とは何か。
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