「オール関西」の関空、評価は二分

 国が出資する新関西国際空港会社は2015年12月15日、関空と伊丹の運営権売却について、関西エアポートと正式契約を結んだ。契約期間は2060年3月31日までの44年間を予定。運営権の対価は490億円超のほか、収益の1500億円を超えた額の3%分を追加で支払う。履行保証金は1750億円とした。

 事業開始時点では、オリックスとヴァンシが関西エアポートの株式を40%ずつ、関西を拠点とする企業・金融機関30社が残り20%を保有する。「オール関西」が売り物の運営会社だ。

関空・伊丹の運営権売却で契約書を交わす(左から)新関空会社の安藤社長と関西エアポートの山谷社長、ムノント副社長
関空・伊丹の運営権売却で契約書を交わす(左から)新関空会社の安藤社長と関西エアポートの山谷社長、ムノント副社長

 オリックスは航空機のリース事業を手掛けており、ヴァンシはフランスやポルトガル、カンボジアなどで空港を運営している。この流れだけを見れば、実質的には国が運営してきた従来よりも、空港の利便性などが改善され、利用者にもメリットがありそうだ。しかしながら、乗り入れる国内外の航空会社からは、民営化前のほうが物事がスムーズに決まっていたという。

 1つ星から5つ星まで、星の数で空港を格付けする英国のスカイトラックス社の調査が入る時期になると、航空会社はチェックインカウンター周辺に置いてある客室乗務員をかたどった案内表示などをしまうよう、関西エアポートから言われたという。

 ある海外の航空会社の社員は、「われわれも協力したが、いつまで経っても、もとに戻して良いとも、いけないとも言われず、聞いても明確な返事がない。お客様からわかりにくいというお叱りを受け、自然ともとの状態に戻っていた」と、当時の様子を説明する。

 関西エアポート側は、各社がバラバラな案内をカウンター前に置くことで、美観を損ねるといった点を懸念していたようだという。しかし、一見バラバラに見えても、利用者にわかりやすいことのほうが、見た目よりも重視されるべきではないだろうか。

 関空発着便のプロモーションも、関西エアポートによる運営になってからは、従来よりも自由度が減ったと、別の航空会社幹部が打ち明ける。

 「これまでは、あうんの呼吸で共同プロモーションを打っていたのに、突如『社長がダメだと言っている』と、予算を大幅に減らされることがある」と、コストカットが就航便のプロモーションにも及んでいるという。

 訪日客数増加の波に乗り、ゴーストタウンから息を吹き返した関空。筆者は内外を問わず多くの航空会社幹部に接したが、関西エアポートが航空会社に協力的だという評価は、一度も耳にしなかった。

 唯一の例外は、国際的な業界団体であるIATA(国際航空運送協会)の幹部に話を聞いたときだった。日本の空港民営化には彼らも関心を持っているようで、率直な意見を聞かれた。筆者は、内外の航空会社からの評価が芳しくない点を彼らに洗いざらい伝えたが、驚いた表情を見せた。

 関西エアポートは今年1月、保安検査場に利用者の待ち時間短縮を図る「スマートセキュリティー」システムを国内初導入。手荷物のX線検査レーンの長さを長くし、レーンを通過できる人数を従来の2倍近い、1時間あたり300人に増やした。この点を、運営会社が変わったことによる成果として強調することが多い。

 IATAの幹部は、「新関空会社ではなかなか実現しなかったことが、関西エアポートになって実現している。スマートセキュリティーの導入がそうだ」と、高評価だ。

 しかし、航空会社の幹部は裏事情をこう明かす。「スマートセキュリティーは、国交省の担当者が時間を掛けて取り組んできたもの。関西エアポートだけの手柄ではない」。

 顧客である航空会社と、国際的な影響力があるIATA。関西エアポートの接し方は、両者に随分と開きがあるようだ。

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