手荷物重量の厳格化進む
国内線の路線数最多のジェットスター・ジャパンが、黒字化が遅れた理由の一つに挙げているのが、関西空港の第2拠点(ハブ)化の遅れだ。当初2012年10月に予定していたが6回延期となり、2014年6月12日に拠点化した。

24時間空港の関空で夜間整備や駐機が可能になり、機材繰りや路線計画の制約が減少した。2015年2月には、初の国際線となる関西~香港線を開設し、成田からも台北や香港、マニラへ就航している。
収益改善に向けた取り組みは、他のLCCと同様にコスト削減や付帯収入比率の向上だ。その中で、「増収効果は狙っていない」(同社幹部)としながらも、重視している取り組みがある。手荷物手数料の「公平化」だ。
「公平化」と言われても理解できない人も多いかもしれない。通常、手荷物を預けない乗客の場合、機内に持ち込む荷物についてまで、チェックインカウンターなどで重さを量らされるケースはほとんどない。明らかに機内に持ち込める手荷物の重量制限を超えていれば、声をかけられることはあるだろうが、通常は7kgを多少超えていても、見逃されることが多い。
こうした点をジェットスター・ジャパンは「公平化」として、機内に持ち込む手荷物を見逃すことなく搭乗口前で計量し、重さが規定である7kg以内でないと、追加料金を支払うよう求めているのだ。
LCCにとって、こうした手数料は収益性向上に不可欠。サービスを公平に提供するうえで、販売手数料のように航空券を購入時に徴収できる手数料は、公平さを保てる。同じように手荷物でも「公平化」を進めようという狙いが、ジェットスター・ジャパンにはあるという。

世界的に見ると、LCCのみならず、中東のエミレーツ航空も手荷物の重量制限は非常に厳格だ。「乗客の中には規定通り手数料を払っている人もいる。正直者が馬鹿を見たと思われないようにしていきたい」(ジェットスター幹部)としている。
確かに公平性は不可欠で、出発地から目的地へ飛ぶ基本料金以外のものを、全てオプションとしている以上、経営面では取りこぼしがないようにするのは妥当な判断だろう。しかし乗客にとってみれば、搭乗前に毎回、手荷物を計量しなければならないとなると、マイナスイメージを抱きかねない。
私は今年8月上旬、成田から福岡までジェットスター・ジャパンを利用した。予定が決まり航空券を購入したのが前日だったため、大手は普通運賃しか残っていなかったからだ。ジェットスターは、大手の普通運賃の片道分以下だった。
しかし、他のLCCでは機内に持ち込める手荷物が10kgまでなのに対して、ジェットスター・ジャパンは7kgまでとなるので、取材に必要なデジタル一眼レフ用レンズを減らして搭乗した。貨物室に積み込む受託手荷物扱いにするのであれば、20kgまでの場合は1250円となっている。
前述のように、LCCが手荷物の重量を厳格に計量するのは、国内でも当たり前になってきた。一方で、運賃の低価格化が進まなければ、大手の早期割引運賃や、ホテル代も含まれた「ダイナミックパッケージ」との競争に敗れかねない。
日本でLCCが浸透しつつある今、こうしたオプション料金を乗客に納得して支払ってもらえる取り組みが、今後日本でLCCが発展していく上で課題となるだろう。
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