主戦場のアジアで、誰と組むのか?

 親密な関係を航空会社間で築く共同運航のほかに、世界の航空各社が模索しているのが、アライアンスの枠組みを越えた提携である。特にアジア地域で誰と組むかが、今後のビジネス展開の明暗を分けかねない。

ANAはJALと共同運航をしていたベトナム航空に出資した(撮影:吉川 忠行)

 ANAを傘下に持つANAホールディングスは5月28日、ベトナム航空と資本・業務提携の契約を締結した。ベトナム航空株の約8.8%を2兆4310億ドン(約117億円)で、7月を目途に取得する。

 出資にとどまらず、コードシェアやマイル提携、空港業務委託、技術支援など、両社は包括的な提携を進めていく。これにより、10月30日に始まる冬ダイヤからは、ANAとベトナム航空がコードシェアを開始する。

 そもそもベトナム航空は、スカイチームに加盟しており、スターアライアンスに加盟するANAとは、航空連合のグループが異なる。その上、ベトナム航空は現在、JALとコードシェアを実施している。

 だが今回の提携を機に、ベトナム航空はコードシェアのパートナーをANAに切り替えるという。ただしアライアンスはスカイチームにとどまる。

 2ページ目で触れた通り、アライアンスよりも航空会社間の関係を深めたものが共同事業だった。だが結果として共同事業は、同じアライアンスに加盟する航空会社の間で結ばれることが多かった。どちらかというと、アライアンスの枠組みを超えて共同運航を実施したり、出資して提携したりするようなことは、タブーとされてきたのだ。

 だがANAの篠辺修社長は、アライアンスの枠組みを超えた提携関係を構築することについて「全然問題ない」と気に留めない。「出資についても、経営権を握ろうという話ではなくあくまでマイノリティ。先方の国で民営化を少しでも進めたいということで、我々にチャンスが来た」と語る。あくまでもアジアでの事業展開の一つという位置づけだ。

 一方、提携先を失うJALは、ベトナムで新たなパートナーを見つけなければならない。

 アライアンスの枠組みを超えて、より実利のある航空会社と関係を結ぶように、航空業界の動きは変わってきている。それは見方を変えると、アライアンスという制度が、一つの時代の役割を終え、新しい競争環境が生まれつつあることを意味している。その中で今後、日本の航空会社はどこを目指すのか。

 JALの大西会長は、「アライアンスは将来あまり有効ではなくなる。その時に誰と組むか、共同事業をアジアで誰とやるのかがキーだ」と語る。ASEAN(東南アジア諸国連合)ではAEC(ASEAN経済共同体)が発足したが、EU(欧州連合)のような航空自由化には至っていない。

 「東南アジアは一国ごとのマーケットが小さく、“つぶつぶの国”。各国の航空会社と2国間の共同事業をやっても現状はあまり意味がない。EUのようになるまでには、10年ぐらいかかるのではないか」(大西会長)と、ASEAN諸国にどういう変化が起こるかで、日本の航空会社が将来打つ手が変わるとの見方だ。

 かつてアライアンス制度がスタートした時、サービスレベルが低い会社はそれが大幅に向上するというプラスの作用を生んだ。半面、サービスレベルの高い航空会社の顧客にとってみれば、「質が落ちた」と感じることもあったという。その後、さらにアライアンス間の競争は激化し、もはや主要な航空会社がいずれかのアライアンスに加盟するようになっている。

 こうした中で共同事業が生まれ、ついにはアライアンスの壁を乗り越えた提携が登場し始めた。アライアンスという装置はこの先、役目を終えるのか。それともさらに進化するのか。加盟する航空各社がさらなる利点を見つけられなければ、アライアンス制度そのものが時代の役目を終えるかもしれない。そして何より、アライアンスの枠組みを超えた提携が進めば、そのうち3アライアンスの中でも、航空各社の“組み替え”が起こるかもしれない。