関係を“深化”させた共同事業で差別化図る

 ANAやJALが現在、注力しているのは、特定の航空会社との提携強化だ。共通運賃の設定や、乗り継ぎ利便性を考慮した運航ダイヤなど、独占禁止法の適用除外(ATI)を申請して共同事業を海外のパートナーと展開している。

 ANAは欧州ではルフトハンザグループと、米国ではユナイテッド航空と共同事業を実施している。JALは欧州でブリティッシュ・エアウェイズとフィンエアー、米国はアメリカン航空と組む。現在はスペインのイベリア航空との共同事業実現に向け、国土交通省にATIを申請している。

 なぜ、他社の便名を自社便に付与するコードシェア(共同運航便)やアライアンスではなく、共同事業なのか。JALの大西賢会長はこう説明する。「コードシェアから一歩進んだのがアライアンス。もう皆が入ってしまったので、今はいかに信頼できる相手と組んで、地域をカバーするかが重要になっている」。アライアンスがマイルやラウンジ利用といったサービス面での提携なのに対して、売り上げをシェアするなど、異なる会社同士が一体化してビジネスを進めるのが共同事業だ。

 アライアンス内でのコードシェアも、売り上げは航空券を販売した会社の懐に入る。「セールスマンにしてみれば、相手会社の席でも、自分の会社の席でも、空いていればまず自分の席を売る。セールスマンにしてみれば相変わらず敵は敵。ところが共同事業では最終的に同じ財布に入る。どっちを売っても後で売り上げを分け合うのだから、販売に対するメンタリティーが変わる」(大西会長)と説明する。

 共同運航の場合、確かにJALのセールスマンは、JALの席のほかに、共同運航先の席も販売することができる。だが共同運航先の席を売れば、収入は相手先に入る。当然ながら、JALの社員であれば、まずは自社の空席を埋めようとするだろう。他社の空席まで必死で売る必要はない。だが共同事業の場合、売り上げを折半するのだから、自社の席でも相手先の席でも、売れた方が売り上げは高くなる。自社便か、相手先の便かを気にせず売れる点が、セールスマンにとっては大きなインセンティブになるというわけだ。

 共同事業を組む相手は、ANAもJALも同じアライアンスの仲間。結局は、従来のアライアンスの関係の中で、一部の航空会社と提携を“深化”させ、共同事業に至ったと言えるだろう。

 ANAの幹部によると、ルフトハンザと共同事業を始めてからは、ドイツ路線の機内の様子が変わったという。「ルフトハンザ便として乗った乗客の中には、サービスを気に入ってくれて、次回はANA便を選んでくれる人も出てきた」(ANA幹部)と外国人客の増加に貢献している。

 海外発券が増えれば、円建ての売り上げだけに頼らなくて済むようになり、為替変動リスクを一定程度は抑制する効果も見込めるようになる。単に外国人客が増えるだけがメリットではないのだ。