「誰も得をしない」機体

 5月31日、独ハンブルクで開かれたエアバスの説明会で、ファブリス・ブレジエCEO(最高経営責任者)は「A350-800を開発することは、航空会社にとっても、われわれにとっても最善ではない」と、短胴型の開発中止を示唆した。

 旅客機は引き渡し後、20年程度飛び続けることが多い。たった16機であっても、一度飛び始めてしまえば、メーカーは全機退役するまでサポートを続けなければならない。16機では製造しても、誰にもメリットがないのだ。

 A350 XWBのラインナップが2機種に絞られることで、エアバスは大型機としての位置づけを明確に出来る。そして、開発もこの2機種を基に派生型を開発していけばよくなる。A350-800の名前がカタログから消える日は、そう遠くないだろう。

 6月1日、米ユナイテッド航空がサンフランシスコ~シンガポール線を、ボーイング787-9による直行便で開設した。シンガポール行きの飛行時間は16時間以上で、787による定期直行便では世界最長路線となった。

 シンガポール航空もA350 XWBの超長距離型「A350-900ULR(Ultra-Long Range)」を導入し、北米直行便を復活させる。

 A350-900ULRのように、エアバスは標準型であるA350-900の基本構造はそのままに、航続距離の異なる機体を揃えることで、航空会社にコスト面での優位性を訴求していく。すでに「A350-900リージョナル」という、短距離型の売り込みも始めている。

 かつては路線ごとに最適な機材を飛ばしていたが、運航コストを考えると機種が多いことは得策ではない。仮に機材を分けるにしても、共通性が高いものを選ぶことで、運航効率を高めるのは当然だ。そして技術の進歩により、エンジンが2基の双発機でも、ジャンボのような4発機と同じ距離を飛べるようになった。

 エアバスによるA350 XWBの位置づけ見直しは、マーケットのニーズを敏感に反映したものだ。こうした機体メーカーの動きは、乗客には短期的に関係しない。しかし、長期的に見れば商品力が高まることで、長距離国際線用の主力機材が事実上1機種しかない現状の打開につながり、さらに快適な旅客機が将来誕生することになるだろう。