長距離路線のビジネスクラスでは、寝心地にこだわったフルフラットシートが主流になってきた。中でも、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、全席が通路側に面した個室タイプの「スタッガード配列」を導入し、ビジネスパーソンの支持を集めている。

 大手2社の動きを見ていると、最新のシートを搭載した機材はビジネス渡航が多い路線へ優先的に導入される傾向がある。一方、同じ高需要の路線でも、ハワイなどのリゾート路線や、シンガポールやバンコクといった中距離路線は、長距離路線と比べてどうしても見劣りすることが多い。「中距離路線や短距離路線のビジネスクラスはいまいち」と感じている人も多いのではないだろうか。

 だが近年、中距離路線向けの航空機が各社の目玉商品となりつつある。日本人に人気の高いハワイ路線を見ると、JALは2015年3月から、成田~ホノルル線の一部にボーイング767-300ER型機の新仕様機「スカイスイート767」を投入。同社のハワイ路線のビジネスクラス初となる、フルフラットシートを導入した。

JALが中距離路線向けに導入するビジネスクラスのシート(撮影:吉川 忠行、ほかも同じ)
JALが中距離路線向けに導入するビジネスクラスのシート(撮影:吉川 忠行、ほかも同じ)

 ANAも、2019年春には総2階建ての超大型機エアバスA380型機を導入する予定だ。ファーストクラスを設け、総座席数も500~600席にのぼる。当然ビジネスクラスも、競争力の高いシートになるだろう。

 そしてこの3月、JALが運航する中長距離国際線用のうち、最後まで更新が残っていた機材の新シートが発表された。フルフラットシートながら、スタッガード配列ではないのが特徴だ。

 新シートの配列は、国内の航空会社ではJALが初導入。どんな乗客をターゲットに据え、どのような使い方を想定しているのだろうか。

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