羽田からの足はタクシーだけ
日付が変わり、羽田には定刻よりも4分早く深夜0時56分に到着した。搭乗橋からターミナルに入ると閑散としており、昼間の羽田とは全く異なる光景が広がっていた。到着階に出ると、多くの乗客はタクシー乗り場へ直行していた。

深夜1時過ぎともなると、国際線ターミナルからは、新宿や渋谷、池袋といったターミナル駅へ向かう深夜バスが発車する。けれど国内線ターミナルからは、国際線ターミナルから出るバスには間に合わない。ターミナル間を巡回する連絡バスの運行も終わっている。そのため羽田の国内線ターミナルから都心へ向かう選択肢は、あらかじめ空港の駐車場に自家用車を止めておくか、誰かに迎えに来てもらうか、タクシーを活用するしかない。
筆者の場合、最寄りのターミナルは池袋なので、タクシーの定額運賃だと1万4000円ほど。今回は福岡から羽田までの便が満席だったために深夜便を選んだが、自宅まで1万円以上かかるとなると、積極的に選べる人は限られるだろう。


臨時の深夜便を飛ばすのはスターフライヤーだけではない。昨年経営破綻したスカイマークや、北海道のエア・ドゥも運航している。羽田は24時間空港なので、開いている時間帯を活用しない手はない。だが各社が共通して抱える悩みは、深夜便を飛ばしても、羽田からの交通手段が事実上タクシーに限られるという点だ。
空港から目的地のエリアごとに金額が定められたタクシーの定額運賃は、事前にどの程度の運賃なのか分かるが、それでも財布には痛い。各航空会社は今のところ、需要開拓型のビジネスとして深夜便を運航しているが、せめて羽田への臨時便が運航される日には、空港とターミナル駅を結ぶ深夜バスに接続してほしいものだ。
もちろん、バス会社側の言い分も理解できる。100人にも満たない乗客が羽田へ到着し、目的とするターミナル駅もバラバラなのに、需要を当て込んでバスを運行しても、採算が取れるとは思えない。つまり国内線深夜便の乗客だけをターゲットにしていては、バス会社の商売は成り立たない。
ただ、それであれば現在、羽田の国際線ターミナルから出発するバスの時刻を、国内線深夜便の乗客も利用できるよう、時間を後ろ倒しにしてみてはどうだろうか。羽田から都内ターミナル駅へのアクセスが確保できるだけで、国内線深夜便の利用者は増えるはずだ。
今回利用した北九州から羽田へ向かう深夜便も、空港からのアクセスが改善されれば、LCCを使った台北弾丸旅行のように、目的地での滞在時間を最大限活用できるツアーが組める可能性がある。
実際に深夜便に乗ってみて、改めて感じた課題は、何よりも到着した空港と、都市部の接続だ。この課題を解消すれば、関西空港でピーチ・アビエーションの深夜早朝便が新たな需要を掘り起こしたように、これまでとは違った人の流動を創出できる可能性がある。
膨大な後背人口を抱える羽田であればなおさらだ。現在進めている、国際線ターミナルからの深夜バスの実証実験のように、既成概念に捉われない取り組みを地道に続けて、利用者に利便性を伝えていくことが、何よりも重要であろう。
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