ピーチCEO「ANAとは一切連携しない」

 冒頭で触れた通り、持分法適用会社であるピーチは創業以来、ANA本体と一定の距離を置いてきた。ANAHDの片野坂社長は2月24日にピーチの子会社化を発表した会見で、「ピーチの独自性を尊重する。株主間契約も確認し、ピーチの社員にも説明した。企業価値をもっと高めてほしい」と説明。子会社化はするけれど、ピーチの独自性を維持すると明言した。

 通常、子会社化すれば、親会社から役員が送り込まれてくる。既にピーチにはANAHDから役員が派遣されているが、片野坂社長は、さらなる役員や幹部の派遣を否定。「ピーチ側が望まない人事は行わない」と説明した。

 現在ピーチは、ANAHD傘下のANAと、航空券の予約などにおいて全く異なるシステムを導入している。だが今後、親会社との関係を強化する方向に進むならば、予約システムの統合やコードシェア(共同運航)、共通するマイレージの導入、アライアンス(航空連合)への加盟などが検討されるはずだ。

「ANAと一切連携しない」と語るピーチの井上CEOと、「これから考えるかもしれない」と語るANAHDの片野坂社長
「ANAと一切連携しない」と語るピーチの井上CEOと、「これから考えるかもしれない」と語るANAHDの片野坂社長

 しかし、ピーチの井上CEOはこれらについて「一切やらない」と断言。ANAとは交わらず、従来通り、大手のフルサービス航空会社とは距離を置いて、LCCとして運航していくことを強調した。

 井上CEOの言葉に、片野坂社長は「今は一切やらないということが分かったが、これから考えるかもしれない」と応じたうえで、「最初に(ピーチ側の)意見をうかがい、それを尊重する」と述べた。

 井上CEOは、「(ANAHDの子会社になることで)何をやらないかを明確に決めた。システム統合やコードシェアはやらない。アライアンスは論外。お客様の期待値が、ANAとピーチでは違う。角が取れれば普通の航空会社に近づいてしまう。ピーチはますますとんがらないとだめで、それがANAHDの価値向上につながる」と説明。LCCとして、ピーチがこれまで築いてきたブランドに、さらに磨きをかけていくと明言した。

 会見で顕著だったのは、ANAHDとピーチの温度差だ。だがピーチを立ち上げた背景を振り返ると、安直にANAグループと連携してしまえば、それこそピーチの強みを削ぐことになりかねない。

 記者のインタビューに応じた井上CEOは、「ANAHDの本体では出来ないことをやるために、社内ベンチャーとして始まったのがピーチ。アジアの航空会社と戦って勝てる日本の航空会社はピーチ以外にないということで、ANAHDの増資が決まった」と強調。競争が激化するアジアの航空市場を、ANAグループが押さえるうえで、その大きな武器となるのがピーチであると語った。

 ANAと何の連携もせず、独自路線を貫くのであれば、子会社化する必要はなかったのかもしれない。もちろん、ANAHDの傘下に入ることで、ピーチは機材や燃料を調達する際のスケールメリットが得られるとも考えられる。ただピーチは既にANAグループと燃料を共同調達しており、今さらこれが子会社化するメリットであるというのは無理がある。

 一方で現状、ピーチの機材はリースが中心だ。子会社化によってピーチの信用力が高まれば、より安価に機材を調達できる可能性は高まるはずだ。また、引き抜き合戦が激しくなっているパイロットについても、「ANAHDが後ろに付くことで、信用力が高まる」と、井上CEOは採用面のメリットを説明した。

 パイロットについては、社外からの採用だけではなく、労使間の話し合いが決着すれば、ANAグループ内でパイロットを融通することも可能になるはずだ。

 経営面では、順調に利益を出しているピーチ。今後も独自性を維持するには、結果を出し続ける以外に道はない。当面のピーチの目標は、就航10周年を迎える2022年に、北東アジアのリーディングLCCとなることだ。

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