国内初のLCC(格安航空会社)として、2012年3月1日に就航し、今年で5周年を迎えたピーチ・アビエーション。
節目となる就航5周年の直前の2月24日、全日本空輸(ANA)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD)が、ピーチを連結子会社化すると発表した。

この発表は、ピーチ本体を含む、さまざまな方面で多様な憶測を呼んだ。
現在のピーチの株主は、ANAHDのほか、香港の投資ファンド「ファーストイースタンアビエーションホールディングス(FE)」と、日本の産業革新機構(INCJ)の3社。ANAHDの出資比率は38.7%で、持分法適用会社だった。だが4月10日、ほかの2社が持つ株式を一部取得することで、持ち株比率を67.0%まで引き上げて、子会社化する。
ピーチの2016年3月期通期決算は、純利益が前の期と比べて2.5倍の27億4400万円となり、3期連続で黒字を達成している。さらに5期目では累積損失も解消した。
売上高は前年比1.3倍の479億3900万円、営業利益が同2.1倍の61億8100万円、経常利益は同3倍の47億5900万円。さらに営業利益率は12.9%と、国内に4社ある国内LCCの中でも唯一の勝ち組と言われるほど、強固な収益基盤を築いている。
ANAHDには、ピーチとは別に、100%出資するLCCで、リゾート路線を中心とする戦略のバニラエアがある。同社はこれまで、ANAグループとして、100%子会社のバニラと、持分法適応会社のピーチを擁してきたが、4月以降は2社のLCC子会社を抱えることになる。
ピーチが国内LCCの中で成功した大きな要因は、ANAグループながらも、本体と一定の距離を置いたことが大きかった。多様な経歴の人材を集め、大手航空会社の発想では思いもつかないコスト削減やキャンペーンなどを展開したことが、功を奏してきた。つまりANAグループながらも、「大手航空会社らしからぬ」経営こそが強さの源泉だったのだ。

しかし、今回の子会社化によって、これまでピーチが培ってきた「強み」が失われるのではないかーー。ANAHDによるピーチ子会社化の発表を受けて、こうした懸念が、航空業界に広がった。
一方、5年の時間をかけて実った“モモ”を、ANAHDが今、子会社化する狙いは何か。真相を探った。
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