この3月1日で、関西国際空港を拠点とするLCC(格安航空会社)、ピーチ・アビエーションが就航4周年を迎えた。2012年に初の国内LCCとして就航し、2014年3月期には黒字化。2015年3月期も、純利益が前期比2.1%増の10億6800万円と、2期連続黒字を達成し、2016年3月期の累積損失解消が至近の目標だ。

就航5年目に入るピーチ・アビエーション(撮影:吉川 忠行、ほかも同じ)
就航5年目に入るピーチ・アビエーション(撮影:吉川 忠行、ほかも同じ)

 ピーチは2012年3月1日、札幌線と福岡線の国内線2路線を開設。当初はエアバスA320型機(1クラス180席)2機で運航を開始したが、現在は17機となり、国内線14路線と国際線10路線の計24路線を飛ばすまでに成長した。

 深い赤とピンクの中間色「フーシア」をブランドカラーに採用し、若い女性を中心としたマーケティングを進めたピーチ。国内だけではなく、台北など海外の就航地でも他社との差別化に役立った。今や顧客は20~30代の女性だけではなく、スーツ姿の男性も多い。LCCといえば遅延や欠航というリスクはあるが、出張帰りなどスケジュールに余裕のある場面で利用するようになった。

 井上慎一CEO(最高経営責任者)は、「台湾へ昆虫採集に行く人、北海道に下宿している息子を月に一度訪ねる人、台湾から沖縄の美容院に行く人と、これまで考えられなかった飛行機の旅をお客様自身が考案し、楽しまれている」と、運賃の低廉化が新しい旅の形を作り上げていると話す。

就航4周年の記念イベントにはキユーピーのキャラクターも参加した
就航4周年の記念イベントにはキユーピーのキャラクターも参加した

 現在飛行機を夜間駐機し、整備できる拠点は関空と那覇空港の2ヵ所。2017年夏を目途として、仙台空港の拠点化も進めており、成田国際空港も拠点とすべく路線を拡大している。

 1機の飛行機をいかに効率よく長時間稼動させるかが勝負となるLCCにとって、整備や乗員のやり繰りができる拠点空港が複数になれば、開設できる路線の自由度が広がる。将来的には、競争が激化している台湾の台北(台湾桃園国際空港)や、韓国のソウル(仁川国際空港)の拠点化も視野に入れている。

 国内LCCでは2番目となる、2012年7月就航のジェットスター・ジャパンも、親会社である豪州カンタス航空の決算発表によると、2016年6月期上期(15年7~12月期)は、EBIT(支払金利前税引前利益)が黒字になった。しかし、豪州本国が数字を非開示としているため、どの程度の黒字になったかは不明だ。

 夜11時から翌朝6時までは離着陸が原則できない“門限”がある成田を拠点とする同社も、2014年6月に24時間運用の関空を第2拠点化したことで、徐々に機材稼働率が向上。2015年2月に、初の国際線となる関空~香港線が就航し、客単価の高い国際線が飛ばせるようになったことで、「日本の会計基準でも黒字化した」(同社幹部)という。

 現在4社ある国内LCC。ANAホールディングス傘下のバニラエアも、2016年3月期には黒字化が見込まれている。中国最大のLCCである春秋航空の日本法人、春秋航空日本を除けば、日本国内でもLCCは事業として成立するようになってきたと言えるだろう。

 国内LCC元年から数えて5年目に入った今、どのような課題があるのだろうか。

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