ANAの「A380」とガチンコ勝負

 2020年は北米就航だけではない。東京証券取引所第1部へ上場させる年でもある。井手会長の古巣であるスカイマークは、1998年9月に初便を就航させた約2年後の2000年5月に東証マザーズへ上場している。企業規模も事業環境も異なるが、上場までにスカイマークの約2倍の期間を見込んでいる。

 一方、2018年には2機種目となるA330導入と、第2拠点となる成田就航が重なっている。2機種ともグループで運航している機材ではあるが、小規模の会社には少なからず負担がかかる。こうした部分で、2機種目と第2拠点という大掛かりなイベントが同じ年に控えているのが気になるところだ。

 また、成田へ就航した時点で、中部路線の成績が芳しくなければ、成田が事実上の第1拠点となりかねない。2018年はエアアジア・ジャパンとセントレア双方にとって、大きな分岐点となる年になりそうだ。

 翌2019年も気が抜けない。この年の春には、ANAを傘下に持つANAホールディングスが総2階建ての超大型機エアバスA380を東京~ホノルル線に投入する。ライバルであるJALの牙城、ハワイ攻略の切り札で、ファーストクラスも設定する。

 一見、フルサービス航空会社のANAとLCCのエアアジア・ジャパンでは、マーケットが異なるように見える。しかし、A380は桁違いな座席数を設定可能だ。世界最大のA380運航会社である中東のエミレーツ航空が飛ばす3クラス489席仕様の場合、ファーストクラスを14席設定しても、ビジネス76席、エコノミー399席にのぼる。ANAも500~600席クラスの座席数を検討しており、同程度になりそうだ。

 日本人に最も人気のあるハワイ路線は、JALとANAだけではなく、ハワイ好きに人気のハワイアン航空をはじめ、米国系航空会社などがしのぎを削る。ANAはJALに挑む以上、品質と価格の両面で攻勢をかけてくるだろう。

 観光路線のエコノミークラスは、より運賃が安い航空会社に流れる傾向がある。席数が多いA380を導入するANAは、エアアジアを意識した値付けをする可能性もある。手荷物料金や機内食、機内エンターテインメント、マイルなどに利用者が価値を感じれば、大手の低価格運賃が選ばれることもある。早期購入の割引運賃や、ホテル代と合わせた「ダイナミックパッケージ」であれば、LCCに匹敵する値段を打ち出すかもしれない。

 エアアジア・ジャパンもこうした競争環境を想定した上で、計画を立てるはずだ。井手会長は「さらに安いLCCマーケットを作るのは容易だ」と、自信を見せる。

 しかし、気がかりなのは航空会社側の計画だけではない。機体をはじめ、ドル建て決済が多い航空会社にとって、為替や燃油といった外的要因の変化が経営を左右する。スカイマークが経営破綻に追い込まれた要素のひとつが、急激な円高だった。

 「前の会社では円高に苦しめられたが、今は円安基調だ」と井手会長は現状を評したが、すでに1ドル110円が目前に迫っている。円高に振れることで観光需要が刺激される側面もあるが、5年後を予測することは困難だ。燃油も大手2社が2016年4月から燃油サーチャージを廃止するなど下落傾向にあるが、2~3年後には上昇していると見る意見も聞かれる。

 前述のように、井手会長はコンサバティブな計画だと強調する。為替や燃油市況の変動も織り込んでいるだろう。そして、「エアアジア・ジャパンはメード・イン・中部。不退転の覚悟だ」と、地元と一体となった取り組みに意欲を示した。

 一方で、「事業としてやれなくなれば、すぐ撤退となる。そうならないためにも、確実に利益が上がるビジネスプランでないと、長くセントレアをベースとした航空会社になれない」と訴え、中部一丸となった取り組みが実現するよう、会場に集まった地元関係者に訴えた。

 自治体や空港会社を取材していると、航空関連企業の悩みに対し、まるで他人事のような態度を示す担当者もいる。これは愛知県に限った話ではない。彼らにとっては、たまたま巡ってきた部署が航空担当なのだろうが、企業側にとっては死活問題だ。

 航空会社側の努力だけでは、日本の航空需要を活性化するのは限界がある。今回のエアアジア・ジャパンによるセントレア就航は、単なる再参入の成否やハワイ初就航だけが焦点ではない。今後日本の空が発展するうえで、自治体が「我が事」として取り組めるかが試される機会とも言える。日本の中心に位置するセントレアの優位性を、官民一体となって生かしてほしいものだ。