「社内に緊張感がない」

 2017年の暮れ、大きなニュースが航空業界を賑わした。米ボーイングとエンブラエルが、買収を視野に入れた提携交渉を進めていると発表したからだ。

 提携にはブラジル政府や当局、両社の取締役会などの承認が必要なので、ただちに大きな変化が起きるわけではない。しかし、これまでもバイオ燃料の研究機関を共同設立するなど、関係を温めてきた。

 一方でボーイングは、777や787といった旅客機のティア1(1次請け)として、三菱重工とのパートナーシップがある。MRJについては、カスタマーサポートに関する支援契約を結んでいる。

 リージョナルジェットは100席前後の機体で、ボーイングや仏エアバスは150席以上の機体が中心なので、すみ分けができる。自動車で例えると、ボーイングやエアバスが普通乗用車、エンブラエルや三菱航空機が軽自動車を手掛けていると言えばわかりやすいだろう。これまでボーイングは、三菱重工をリージョナル市場のパートナーとして見ていた、といって過言ではないだろう。

 ところが暮れのニュースで、主たるパートナーはエンブラエルに取って代わられた。そう受け取る三菱重工の中堅幹部は、社内の雰囲気を不安視する。

 「ボーイングとエンブラエルが提携するとなれば、MRJにとって一大事。なのに、社内には緊張感がない」。

 同じような声はこの幹部だけではなく、何人かの関係者からも耳にした。そして、「MRJに対して社外から厳しい指摘を受けても、われわれが一生懸命やっているのに、なぜ応援してくれないのか、という受け取り方をしがちだ」(同)と、現状を正しく認識できていない点を問題視する。

 今回のシンガポールショーも、緊縮財政なのはわかるが、ブースには最低限模型は置いておくべきだろう。対するエンブラエルは、実機やモックアップを使い、メディアに対して改良点を時間を掛けて説明していた。メディア側からも、熱心に質問が飛んでいたのが印象的だ。

エンブラエルはシンガポール航空ショーで次世代機の試験飛行機を展示し、気炎を上げていた

 筆者も国産機が成功してほしいと願う1人だが、今回のエンブラエルとMRJのメディア対応は落差が激しすぎた。模型もないMRJのブースに、海外メディアが首をかしげていたのも無理はない。

 昨年のパリ航空ショーに実機を初出展した際も、三菱航空機が全世界のメディアに配信した写真を見ると、水平が取れていないなど、マイルストーンに公表する写真としては疑問に感じるものが散見された。予算の関係でプロのカメラマンを雇えない場合でも、編集でカバーできる部分もある。写真に対する理解度が比較的高い、航空先進国である欧米の記者から見れば、航空ビジネスに対する本気度を疑われかねないものだ。たかが写真、されど写真である。

 こうしたあえて海外メディアが声高に触れないネガティブなイメージは、一朝一夕に覆せるものではなく、日々の積み重ねによるものだ。

 三菱重工として長期戦で臨むのであれば、航空ショーで海外に誤ったメッセージを送りかねない対応は、再考すべきだろう。