アジア最大の航空ショー、シンガポール航空ショーが2月6日から11日まで開かれた。偶数年の開催で、世界最大で奇数年に開かれるパリ、これに次ぎ偶数年にロンドン近郊で開催されるファンボローの2大航空ショーに次ぐ規模だ。

 シンガポールショーでは、民間機よりも戦闘機をはじめとする軍用機や、ホンダジェットなどビジネスジェットの展示が目を引いた。大型旅客機の展示は、エアバスの最新鋭機で2月14日には羽田へ飛来したA350-1000の飛行試験機が公開されたのみで、初公開の機体はなかった。

 三菱航空機が開発する「MRJ」をはじめとする、地方間路線を飛ぶリージョナルジェット機は、最大手であるブラジルのエンブラエルが次世代機「E190-E2」の飛行試験機や客室モックアップを出展。メディア向けのブリーフィングを設け、熱心にアピールしていた。

 しかし、肝心のMRJは、エンブラエルの対面にブースを構えるのみ。実機やモックアップの展示がないどころか、ブースには模型すら置かれていなかった。海外メディアの知人の中には、模型も展示していないブースを不思議がる人もいたほどだ。

シンガポール航空ショーで隣り合うMRJとエンブラエル(写真:吉川忠行、以下同様)
MRJブースには模型の展示もなく、海外メディアからは不思議がる声も

 三菱航空機は今、MRJの開発費が膨らんだことで、支出を抑えようとしている。2017年3月期通期の純損益は511億円の赤字で、510億円の債務超過に陥っているためだ。一方で、親会社である三菱重工業の宮永俊一社長は、2月6日に都内で開いた会見で「20年、30年のロングタームのサイクルビジネスとして処理している」と述べ、MRJのような完成機ビジネスは、腰を据えて取り組むべきとの姿勢を示している。

 今年1月には、MRJは初のキャンセルに見舞われた。これが開発遅延に起因するものかというと、そうではない。発注主である米国のイースタン航空が経営危機に陥り、FAA(米国連邦航空局)に事業免許を返上したことが要因だ。航空会社ではなくなったイースタンのMRJが、宙に浮いた状態になっていたため、キャンセルで合意に至った。

 MRJは5度の納入延期により、現在公表されている納期は2020年半ば。初号機は全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスに引き渡されるが、東京オリンピックに間に合うかは微妙なところだ。

 納入延期によるキャンセルは今のところ発生していないが、MRJを取り巻く状況は依然として厳しく、さらに言えば日本の航空業界が置かれた状況も、決してバラ色ではない。

 それは、シンガポールショーでも存在感を示していたエンブラエルだけではなく、これまで劣化コピーしか作れないと日本企業が嘲笑してきた、中国企業の追い上げをはじめとする競争環境の激化と、日本企業内に流れる「良い製品を作れば受け入れられる」「日本製品の品質は世界一」という意識から生まれる隙だ。

 MRJや日本の航空業界には、どのような危機が迫り、どうすれば解決できるのだろうか。