機体は消臭、宿も貸し切り
ANA、JALとも、飼い主とペットが一緒に客室で過ごせるフライトは、チャーター便で実施された。定期便では不特定多数の人が利用するため、当然ながらペットが苦手な人もいる。しかしチャーター便ならば、ペットと共に旅をする人に限定したツアーとして実現できる。
ANAが運航したチャーター便ツアー名は、「ワンワンフライト in 北海道」。連れていけるペットをイヌに限定し、成田~釧路間で運航した。
なぜイヌなのか。ANAの広報は、「初めての試みだったので、混乱を避けるために、ペットを1種類に絞った」と話す。イヌに決めたのは、「散歩や外出にある程度慣れていて、ツアーへの抵抗が少ないのではないかと考えた」という。
確かにイヌとネコを比べると、イヌの方が普段から散歩などで外に出る機会は多い。しつけさえしっかりしていれば、飼い主の指示に従わせることもできる。ペットを客室に入れるチャーター便は、国内線では前例がないため、確実な線を狙ったのだろう。




ANAのツアー代金は、飼い主とペット1組で22万2000円。2泊3日の旅程で、航空券と宿泊代、北海道・阿寒湖の遊覧船貸し切りなどが含まれている。現地では、イヌも乗れるレンタカーを用意している。かなり値の張るツアーだが、発売開始から2日間で完売したというから、愛犬家の関心の高さがうかがえる。
ワンワンフライトでは、チャーター便を手配するだけでなく、宿も全館貸し切りとし、宿泊先の宿にもドッグランや愛犬用の足湯などを用意した。ペットに対する苦情が発生するのは機内だけではない。ペットを受け入れる宿だったとしても、イヌ連れでない利用者もいれば、宿泊客同士が互いに気をつかうことになる。トラブルを避けるためにも、全館を貸し切りにしたという。
フライトに投入した機材も、運航を終えた後は清掃や消臭を徹底し、動物が苦手な人が次の定期便で乗っても、問題がないようにした。ペットとともに、参加者に気兼ねのない旅を楽しんでもらいたいということなのだろう。
ワンワンフライトに乗務するパイロットと客室乗務員も、ペット好きを社内で募集。応募した40人の中からメンバーが選ばれた。万一の場合に備え、獣医も同乗した。
機内では参加者に、イヌをモチーフにした茶菓子やイヌ用ドリンク、フォトフレームなどが配られた。さすがに機内でイヌが自由に歩き回ると危険なため、客室では専用ケージに入って、飼い主と搭乗。実際にツアーで乗ってきたのは、トイプードルやチワワ、ポメラニアン、コーギー、フレンチブルドッグ、ヨークシャテリア、柴犬などだった。
フライト後、参加者からはANAに、家族であるイヌとずっと一緒に旅行できたことに対して感謝の言葉が寄せられたという。
ただ残念ながら、現時点で次の予定は決まっていないという。機材を運航後、念入りに清掃したり、宿も貸し切ったりするとなると、ツアーの実施は簡単ではない。発売開始からわずか2日間で完売した以上、ニーズのあるツアーと言えそうだが、定期的にツアーを展開するまでのハードルは高そうだ。
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