アジアと北米を結ぶ動きに、変化が出てきた。

 2016年6月1日から、米ユナイテッド航空がサンフランシスコ~シンガポール線を、ボーイング787-9型機による直行便で開設する。シンガポール行きの飛行時間は16時間以上で、787による定期直行便では世界最長路線となる。米国系航空会社の定期便としても最長路線だ。アジア経済の要衝であるシンガポールと北米を結ぶ唯一の直行便でもある。

 シンガポール航空も、2013年まで運航していた北米直行便を、2018年を目途に復活させる計画だ。新型の超長距離型機、エアバスA350-900ULR(Ultra-Long Range)を導入することで、座席数と需要のバランスを取る。

 このあおりを受けて運休となる路線がある。それが、ユナイテッド航空の成田~シンガポール線だ。これまでユナイテッド航空は、日本からの以遠権を活用して、北米から日本に飛び、その後で日本からシンガポールまで飛んでいた。この日本~シンガポール線が運休すると、ユナイテッド航空の成田発着のアジア路線はソウル線だけになる。

 日本を経由して北米とアジアを結んでいたユナイテッド航空が、今後は日本を経由せず、直接北米とアジアを結ぶ。これは空の「ジャパンパッシング」とも言える。そして、日本の航空会社や空港にとっては、これが一つのリスクとなる可能性が出てきている。

 全日本空輸(ANA)は現在、アジアと北米を結ぶ乗り継ぎ需要の取り込みを、戦略の大きな柱に据えている。成田や羽田空港を経由地に、北米とアジア各都市を結び、成長著しいアジアの航空需要を取り込むこと、特に首都圏では成田がアジア~北米間の乗り継ぎ需要取り込みの役割を担っている。事実、ANAでは最近、アジアと北米を結ぶ外国人旅行客をたくみに取り込み、業績を伸ばしている。成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)も、同じようにアジアと北米を結ぶ需要を重要視している。

「ジャパンパッシング」に、日本の航空会社はどう対抗するのか(撮影:吉川 忠行)

 それにもかかわらず、日本を経由せずに北米とアジアをダイレクトに結ぶ動きが出てきているのだ。こうした動きをANAの篠辺修社長は、「昨日今日に始まったわけではない」とし、今後も北米~アジア間の航空需要の開拓を進めるつもりだと語った。

 シンガポール航空はかつて、ロサンゼルスとニューヨークに直行便を運航していた。2013年に路線を休止したのは、燃油価格の高騰や座席を埋めるだけの需要がなかったことなどが大きい。だがアジア~北米間のニーズはその頃よりも高まっており、超長距離運航を前提とした客室装備が登場すれば、一気に流れが変わる可能性もある。

 航空機の航続距離が伸びたことで実現した、アジア~北米直行便。背景には、機材の進化だけではなく、航空会社間の関係の変化もある。