ベトナムからアジア取り込む

 では、今回のANAのベトナム航空への出資によって、両社の関係や、これまでベトナム航空と提携してきたJALとの関係は、どのように変わるのか。ANA側の狙いから解説しよう。

 ANAは現在、就航地の空白地帯を埋める戦略を進めている。2015年には、JALが加盟するワンワールドの牙城、クアラルンプールとシドニーにも再就航している。クアラルンプール線は13年ぶり、シドニー線は16年9カ月ぶりの自社便再開だ。

 今回、ベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空と手を組むことで、ANAはアジアの中でも成長が見込まれるベトナムやミャンマー、カンボジア、ラオスの航空需要取り込みを図る。そのためにも、ベトナム航空とのコードシェアやマイル提携、空港業務の委託などは不可欠。出資のほかに取締役を派遣する。

 ANAのベトナム路線は、成田~ホーチミン線と羽田~ハノイ線の2路線で、いずれも週7往復運航。ANAホールディングスによると、ロードファクター(座席利用率)は2路線とも7割から8割程度で推移しているという。

 一方、ベトナム航空は日本路線を10路線を週66往復運航。ハノイから羽田(週7往復)と成田(週7往復)、関西国際空港(週7往復)、中部国際空港(週7往復)、福岡(週4往復)の5空港へ、ホーチミンから成田(週14往復)と関西国際空港(週7往復)、中部国際空港(週4往復)、福岡(週2往復)の4空港へ、ダナンから成田(週7往復)へ乗り入れている。

 ベトナム航空との提携関係があったため、ホーチミンやハノイはこれまで、JALとの関係が深い就航地だった。けれど今回の提携を通して今後、ベトナム航空のコードシェアやマイル提携のパートナーは、JALからANAに代わる可能性が高い。

 ANAホールディングスが出資する海外の航空会社は、スターアライアンスに加盟する韓国のアシアナ航空に続いて2社目。ただアシアナへの出資比率は0.63%と極めて低く、本格的な出資は初めてのことだ(一時、ANAホールディングスはミャンマーの中堅航空会社アジアン・ウィングス・エアウェイズに出資すると発表したこともあったが、2014年、競争激化などの影響で出資を取りやめた)。

 出資を伴う提携となると、アライアンスなどとは違った責任も伴うようになる。しかも提携先のベトナム航空は、株式の95%をベトナム政府が保有する。役員1人の派遣で、アライアンスも異なる同社に対し、ANAどの程度が意向を反映できるかは未知数だ。

 従来よりも一歩踏み込んだ提携。ANAのアジア戦略は、どのような成果を生み出すのか。