ジェットと速さ変わらぬプロペラ機

 天草エアラインの機体は、最初からイルカが描かれていた訳ではない。2009年に奥島透前社長が就任した後、2013年3月に新塗装としてお目見えした。奥島前社長はJALのOBで、熊本支店長や整備本部副本部長などを歴任。社員の意識改革や地域との連携を進めていく中で、実現した取り組みだった。

 こうした社内改革の結果、2009年度からは6期連続で最終黒字を達成。自治体の補助を受けているとはいえ、天草エアラインの業績回復や人情味溢れる独特のサービスは、これまでもメディアで数多く取り上げられてきた。

 60人に満たない社員で毎日運航するため、パイロットや客室乗務員、空港の旅客係員、営業担当など、全社員が1人2役、3役をこなす。2014年6月に就任した吉村孝司社長もJALのOBで、奥島前社長と同じく到着便の乗客を出迎えたり、1カ月に1度早朝に実施する機体清掃に加わったりしている。

 2月に就航する2代目みぞか号は、2015年8月21日に熊本空港へ到着。9月29日には地元自治体などを招いた内覧会が空港内で開かれた。そして2016年1月7日、これまで訓練を実施してきた熊本空港から、天草空港に2代目が飛んできた。就航を目前に控え、訓練の拠点を地元に移したためだ。

 着陸前には、翼を左右に振りながら滑走路上を低空飛行で通過し、地元の人たちにあいさつ。空港では、消防車による放水アーチで歓迎を受けた。

2代目みぞか号の機内に立つ客室乗務員

 2代目の座席数は初代より9席多い48席となり、コックピットはエアバスA380型機の技術を取り入れたグラスコックピットを採用。ワインレッドの客室内装はイタリアのデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロによる「ARMONIAデザイン」で、イタリア語で調和を意味する。そして、同クラスのプロペラ機よりも手荷物収納スペースが大きく、LED照明を採用しており、明るい室内になっている。

機体底部に描かれたサンタ姿のくまモン

 機体下部には熊本県の人気キャラクター「くまモン」がサンタクロースに扮した「モンタクロース」を描いた。天草では町おこしとして、「世界サンタクロース会議」を誘致しており、“隠れキャラ”としてモンタクロースが描かれることになった。

 この機体で珍しいのは、機体後部から乗り降りする点だ。主に荷物を積み込む大型貨物室が、機体前方のコックピットと客室の間に設けられているため、このような構造になっている。

 しかしなぜ、2016年にもなってプロペラ機なのだろうか。ジェット機を導入してもよさそうなものだ。理由はいくつかある。プロペラ機というと古めかしいイメージだが、コックピットや機器類、客室内装は最新鋭の機体だ。しかも、天草~福岡線の飛行時間は片道35分、熊本線に至ってはわずか20分と、離陸するとあっという間に着陸態勢に入る。

 この程度の距離であれば飛行時間はジェット機と大差なく、混雑が激しい福岡空港や伊丹空港では、むしろ離着陸の順番待ちに時間が取られてしまう。

 そして、機体価格の約23億円を天草市など地元2市1町が全額負担するため、燃費がジェット機より良く、価格も抑えられる機種が選ばれた。

 運航上の理由だけではない。ボンバルディア社は燃油価格の上昇で、航空会社の採算が合わない50席未満の機体製造から撤退しており、初代みぞか号と同じ機体は、新品ではもう手に入らない。このクラスの新造機を導入するとなれば、ATR社の機種しか選択肢がないのが実情だ。