高齢者や車イスの利用者をサポートできるか

 ANAも、チェックインカウンターのモックアップを使ったコンテストを開いた。2016年度の本選は12月7日に開催され、この日は国内線担当者11人と国際線6人が、日ごろの技を競った。

 冒頭で触れたように、特に国内線ではチェックインカウンターを訪れずに搭乗する利用客が増えている。そこで9回目となる今回は、カウンターでの応対ではなく、その手前で困っている人にどう接するかをテーマにした。

 乗客役は3組登場する。1組目は欠航や遅延のアナウンスを聞き、代替の交通手段を尋ねるビジネスパーソンや観光客、2組目は外国人客で、ANAが共同事業を展開するルフトハンザ ドイツ航空やユナイテッド航空で貯めたマイルの使い方や、おいしい食べ物の問いかけ、3組目は車イスや杖を使う利用者や、高齢者のサポートだった。

老夫婦役にどのように対応するのかなどが評価項目の一つに。写真右手が今回優勝した高野早希さん

 今回の新機軸は、地上係員の手伝いが必要となる可能性が高い3組目のケースだ。ANAやJALでは、手伝いが必要な人向けの専用カウンターを、規模の大きな空港を中心に設けている。しかしたまにしか空港に訪れない人にとって、その存在は知られていない。そこでまずは、近くにいる係員に声を掛けるケースが大半だ。

 今回優勝したのは、成田空港で国際線を担当する高野早希さん。高野さんが迎えた3組目の利用客は、初めてビジネスクラスに乗る、杖を使っている老夫婦だった。

 一緒に旅行する子供からビジネスクラスをプレゼントされたというシナリオで、ラウンジを利用する条件を正しく説明できるかといった知識に加え、利用客がサポートを求めているのか、自分の足で向かいたいのかなど、意向をくみ取っているかも審査しているようだった。

 なかなか搭乗口を覚えられない夫に対して、高野さんは搭乗券に分かりやすく書き込みを加えるなど、笑顔で細かなサポートをしていた。

 国際線部門のトップバッターだった高野さんは「緊張していたので、コンテストを楽しもうと思いました。自分が楽しめれば相手にも気持ちが伝わるはず」と、笑顔で振り返る。カウンターで係員に質問する人の多くは、何らかの不安を抱えている。高野さんはその不安を少しでも和らげようと、笑顔を絶やさずに接していた。

 コンテストを開くことで、出場者たちは自分の強みやブラッシュアップが必要なところを再認識できる。ANAのコンテストの特徴は、趣向を凝らした応援で盛り上げる出場者の同僚による応援団だ。スキルアップする点の洗い出しだけではなく、空港が一つになるきっかけにもなっているのだ。

優勝した高野さんが勤務する成田空港からは、同僚らが応援に駆けつけていた

 ANAの篠辺修社長は、「こうした場を設けることで、係員のモチベーションアップにつながる。ほかの部署の人にも見てもらい、それぞれが自分の持ち場で良い点を生かしてほしいので、もっと多くの人に見て欲しい」と狙いを話す。

 欠航や遅延などが発生すると、真っ先に利用者からクレームを受けるのは彼女たち地上係員だ。それゆえに「褒めてもらう場」(篠辺社長)の存在は大きい。

 かつてJALの植木義晴社長は、「コンテストだから満点は付けられない。でも接客を受けた教官たちは、皆、もう一度この人に会いたいと思った」と、英語で上手く接客できないながらも、懸命に身振り手振りを交え、どうにか役立とうと奮闘した地方空港から出場した2人の係員に、社長賞を出した。

 奇しくも今回、ANAもJALも優勝者は日ごろ国際線を担当している係員だった。国が2020年の年間訪日客数4000万人を掲げる今、こうした国際線担当者のスキルを全社で共有し、地方空港でも外国人客のリクエストに応じられる体制を整えていく必要がある。

 そして、両社が共通して出場者に求めていたのが、車イス利用者をはじめ、係員のサポートを必要とする機会が多い利用客をケアするスキルだ。空港業務の自動化が進む中、空の旅を楽しんだり、仕事で乗ったりする人など、乗客の多様性も増している。こうした利用客への対応力の向上は、航空会社共通の課題と言える。

 コンテストは華やかな舞台であるとともに、課題を再認識する場でもある。転勤や受験など何かと人の往来が増える春に向け、不慣れな利用客にも優しい航空会社であってほしい。