東京の郊外、町田市で“稼ぐ町の電器店”として知られる「でんかのヤマグチ」。山口勉社長は、データから顧客ニーズをつかんだ後も満足せず、細かい変化を見続ける。生の情報と組み合わせて仮説を立て、新しい販売方法を考える。今回は移ろいやすい顧客ニーズのつかみ方を解説する。

 一度顧客ニーズを導き出した後も、再度データをよくチェックする――。

 これは私が自分に言い聞かせていることです。お客さんのニーズは絶えず変化しています。その変化の兆候を素早く、かつ的確に捉えるには、極端な言い方をすれば、一度データから導き出した結論を再度疑ってみることが大切です。そこに新しいニーズが隠れていることがあるからです。

「新規購入客数実績表」。ヤマグチの新規客が購入した商品の内訳のデータを収集している
「新規購入客数実績表」。ヤマグチの新規客が購入した商品の内訳のデータを収集している
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新規客のニーズを掘り下げて商機につなげる

 具体例で説明しましょう。上の写真の表は、ヤマグチの新規客が購入した商品の内訳を示した「新規購入客数実績表」です。新規客は、小物などのその他を除くとエアコン(写真のAC)を購入する人が圧倒的に多い。おそらく暑い時期に故障するなどして、急きょ買わざるを得なくなるケースが増えるのだと思います。

 

 エアコンのニーズが高いので、「(室外機などの)設置が難しい工事でも請け負います」というチラシや店頭ののぼりを作って、お客さんにアピールしたところ、販売台数が伸びました。この経緯については、以前の連載で説明したと思います。

 この結果に一度は満足した私ですが、新しい傾向がないかどうか、その後もチェックを続けました。すると、気付かなかった兆候が浮かび上がったのです。

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