東京都町田市の“稼ぐ町の電器店”「でんかのヤマグチ」。悩みの種は、2011年の地上波デジタル放送完全移行に伴って需要を“先食い”して以来、販売不振が続いているテレビの扱い。しかし、2018年12月1日から4K、8K衛星放送が始まったことで、新たな節目を迎えている。この環境変化を好機と捉え、山口社長は反転攻勢に向けた販売戦略を練った。鍵は顧客台帳に基づくデータの徹底活用。その詳細を今回は紹介する。
テレビが売れない――。この悩みは連載で何度かお話ししてきたと思います。2011年に地上波アナログ放送がデジタル放送に完全に移行した際、テレビが一気に売れました。ところが、需要の“先食い”が起きた反動などから、その後、売れ行きがぱったりと途絶え、7年たったいまだに回復していないのです。
もちろん対策は打ってきました。エアコンや給湯器など、ほかに売れる可能性がある商品の販売を強化し、利益を確保してきたのです。しかし、これはあくまで対症療法に過ぎません。テレビは電器店の屋台骨を支える収益源ですから、テレビ自体の販売不振から抜け出さなければ、本当の意味での経営改革にはならないのです。これは、常に頭のどこかで私が考えていたことです。その反転攻勢に向けたチャンスが今、訪れたと感じています。
なぜか。18年12月1日からテレビの4K、8K衛星放送が始まったからです。4K放送(以下、4K)では、従来のフルハイビジョンテレビの4倍の画素数で鮮明な画像を映し出すことができます。8K放送は同じく8倍の画素数になります。つまり、7年前の地デジ化以来の大きな環境の変化が訪れたのです。
この環境変化は最大限プラスに生かさなければなりません。そこで、秋からヤマグチでは準備を進めてきました。
500万円弱を投じて改装したテレビ売り場
第1弾は、テレビ売り場の改装です。18年10月に460万円を投じて大幅にリニューアルしました。具体的には、隣の売り場との間に仕切りを付け、ある程度独立した空間をつくることで、売り場を訪れた人が画面の映り具合などを集中して確認できるようにしたのです。従来は間仕切りがなかったため、後ろを行き来する人を気にしながら、テレビを見る必要がありました。

間仕切りを設けることで、テレビやレコーダーなどの設置場所も増えました。従来の壁際だけではなく、間仕切り側にも商品を置き、両方確認できるようにしたのです(写真参照)。テレビだけでも10種類多く展示できるようになりました。
テレビ売り場の照明も替えました。画面の映り具合をよりはっきりと分かってもらうために、やや暗めの家庭内にある照明に替えたのです。従来は店舗用の明るい照明だったため、画面の映り具合の違いを確認しづらい部分がありました。改装して2カ月がたちましたが、11月末に50万円台の50インチ有機ELテレビが店で売れるなど、滑り出しに手応えを感じています。
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