東京都町田市の電器店「でんかのヤマグチ」。今年7月から、営業担当者が受け持つ顧客の数を減らし始めた。20年ほど前、家電量販店に囲まれたとき、3万人いた顧客を1万人に絞り込んでサービスを徹底し、生き残った山口社長。その顧客をさらに絞り込むという。大きな決断に至った理由とは。

 お客さんをもっと減らしたい――。こう書くと驚くかもしれません。しかし、私は今年7月下旬から、本気でこう考えて実行に移しました。

 従来、ヤマグチの訪問営業担当者や店舗スタッフは、1人当たり500世帯弱のお客さんを受け持ち、過去の販売データを基に家電の買い替えを促したり、サービスを提供したりしてきました。これを1人当たり400世帯弱に絞り込むことにしたのです。今年7月から絞り込みの作業を社員に指示しました。

顧客を約2000世帯減らす

 20年前、家電量販店に囲まれたとき、私は約3万世帯あった顧客を3分の1に当たる約1万世帯に減らし、値引きしない代わりに手厚いサービスを提供する商売に切り替えて生き残りました。しかし、最近では、1万世帯でもまだ多いと思うようになったのです。

 ヤマグチの社員は管理部門を除く営業担当者が21人(リフォーム担当4人を含む)います。1人当たり100世帯お客さんを減らすと、単純計算で全体のお客さんの数は、1万世帯から7900世帯に減ります。これくらいがちょうどいいのではないかと思ったのです。1人当たり400世帯弱なら、メリハリをつければ、訪問営業担当者が1カ月1回、各世帯を訪問することができます。

訪問営業担当者は顧客の絞り込みを始めている。写真は訪問営業車「シマウマカー」(写真:菊池一郎)
訪問営業担当者は顧客の絞り込みを始めている。写真は訪問営業車「シマウマカー」(写真:菊池一郎)

 ただし、やみくもにお客さんを減らすわけではありません。上得意さんに絞り込むわけですから、明確な基準があります。以前の連載(「お客さんはえこひいきしていいのです)で、お伝えしたように、ヤマグチでは購買頻度と累計購入額で、お客さんを9つに区分しています。

 このうち、過去1年以内に1万円以上の購入履歴があるお客さんを優先的に残し、それ以外のお客さんは購入頻度と累計購入額が少ない順に400世帯弱になるまで顧客台帳から外すように社員に指示したのです。

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