実際、アドバイスしてしばらくしてから、結果を聞いてみると、私の予想通りになりました。売り上げは大崩れすることがない一方、利益が格段に増えたのです。「安くしないといけないという先入観を勝手に持っていた」と、ある店の経営者は話してくれました。

仕事中に本当の笑顔を出せるようになった

 私がもっとうれしかったのは「利益が安定してくると、お客さんに心の底から笑顔で接することができるようになりました」と、その店の経営者が続けて言ってくれたことです。

 これまでは、最近、あまり商品を買ってもらっていないお客さんの自宅を営業で訪問した際、「アプローチしても見込み薄だから、あまり積極的に売り込みたくないな」と思いつつも、無理をして笑顔をつくって粗品まで渡して、「何か家電でお困りのものはないでしょうか」と尋ねていたそうです。

 それが安定して利益を確保できるようになった今では、買ってくれる見込みのあるお客さんに絞って訪問し、粗品を渡しながら本当の笑顔で困り事がないかを聞けるようになったのです。要するに、値引きをやめたことで、トップ自らがモノやサービスを売ってお客さんの役に立つという本来の商売の醍醐味を思い出し、仕事の楽しさを取り戻したというわけです。

ヤマグチの粗利益率は39.8%を確保し続けている(写真:菊池一郎)

 国内人口が減少している現在、経営体力に乏しい中小企業が、安い値段で広く多くのお客さんにモノやサービスを売る戦略はもはや通用しません。効率が悪い上、体力を奪われるだけ。それよりも、限られた優良顧客に絞って値引きせずに適正な値段でモノを売り、アフターサービスなどを含めたフォローをしっかりと実施し、絆を深める。このことの重要性を再認識しています。

(構成:久保俊介、編集:日経トップリーダー

 東京・町田市にある小さな電器店「でんかのヤマグチ」。大手量販店6店に囲まれる中、安売りに背を向け、徹底した「高(値)売り」を貫き、21期連続で黒字を達成しています。今回の講座では、小さくても儲かる店作りのノウハウを徹底解剖。高売りや顧客の絞り込みなどの極意を引き出します。さらに、2015年に移転オープンした店舗の全貌と、そこで毎週末開いているイベントの運営テクニックも明らかにします。

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