実際、今年3月にも、こんな出来事がありました。古くなっていたラジオを買い替えるつもりで来店した夫婦のお客さんと雑談で盛り上がり、新しいテレビを買うかどうかというところまで話が進みました。旦那さんは明らかにテレビが欲しいのですが、奥さんが首を縦に振ってくれるかが気になり、最終決断ができずにいました。そこで、私が後押ししたところ、「社長の薦めなら仕方がないよね」と奥さんも納得。30万円のテレビの購入につながったのです。

五感を研ぎ澄まして売り場に立つ

 夫婦で来店したお客さんの場合、私と雑談していると、どちらからかの会話のニュアンスで「買いたいから社長が最後に相方を説得してくれよ」とサインが出ることもあります。そうした場合には、買いたい人を応援して購入に結び付けます。

「売り場の“異常”を確認してスタッフに伝えるのもトップの仕事」と語る山口社長

 このほか、私が売り場に立つと、ちょっとした気になる点がすぐに発見できることもあります。例えば、店の隅にある掲示物がはがれかかっていたり、雨で床に落ちた水滴が残っていて、お客さんが滑って転ばないようにすぐ拭く必要があったり。店が忙しくなってくると、つい忘れがちな点が目に付きます。長年、売り場に立ち続けているので、何らかの“異常”があると、自然と違和感を持つのです。

 経験に基づく勘に近い感覚だと思いますが、この勘が鈍らないようにするためにも、トップは五感を研ぎ澄まして現場に立ち続けるべきだと思います。

(この記事は日経BP社『「脱・値引き」営業』を基に再編集しました。構成:久保俊介)

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