私が多店舗化を自身に戒めるようになったのは、20年ほど前に失敗した苦い経験があるからです。

 実は、ヤマグチが安売りと決別する少し前、店を6拠点まで増やしたことがあります。結果は最悪でした。店員の接客レベルにバラツキが出て、お客さんが満足する要素がほとんどなくなってしまったのです。多店舗化に加えて無理な安売りをしたことも災いし、当時は約2億円もの負債を抱えました。

昨年10月にオープンした新店。多店舗化するつもりはない(写真:菊地一郎)

負債2億円が実質無借金に

 「このままでは会社が潰れる」。私はこう考えて、安売りと決別する少し前に、幹線道路沿いにあった昔からの旗艦店を1つだけ残して閉店。出直すことにしたのです。その後、サービスに磨きをかけ、収益力を高めてきました。

 おかげさまで昨年、新店を移転オープンする前には、実質無借金になっていました。これが大きくプラスに働いたのです。今回、店を移転しなければならなくなったのは、旧店の前にあった都の道路の拡幅に伴うものでした。そのため、以前の連載で説明した通り、東京都から支援金をもらうことはできたものの、それを上回る費用が発生しました。この費用についても、金融機関からの借り入れに頼ることなく、自己資金だけで賄うことができたのです。