誤解のないように言いますが、もともと2人は非常に優秀です。だからこそ、部長や課長に私が一昨年抜てきしました。それだけ優秀な2人なのに結果が出ていなかった。

 部下も成績が悪いのなら、まだ話は分かります。会社全体の販売戦略が誤っている可能性がありますから。しかし、部下の成績が好調な中で、2人は1月に良い結果を出せなかったのです。部下は立場上、上司に不満があっても「もっと頑張ってください」と苦言を呈することはできません。ここは経営者である私の出番です。

苦しみが快感になってくる

 「苦しみ方がまだ足りない。苦しみこそ新しい知恵が生まれるチャンスだよ。もっと自分をさらけ出してお客さんと向き合えば結果が変わってくるはずだよ」。私は彼ら2人にこう伝えました。

 私のように、何度も経営の修羅場をくぐり抜けていると、掛け値なしで苦境がある種の快感に変わってきます。苦境で知恵を絞って局面を打開すれば、会社がさらに強くなって成功することが経験で分かっているからです。その生みの苦しみを少しでも2人に分かってほしかったのです。

 お得意さんの購買履歴のデータを見ながら、潜在ニーズを探し出して営業する。このヤマグチの商売の基本を知り尽くした2人は、実にスマートにお得意さんに商品を提案して、いつも実績につなげています。

 しかし、商売はいいときばかりではありません。時には、多少格好悪くても、裸の自分をさらけ出して「○○さん、実は今月、自分の成績が伸びなくて厳しい状態なんです。助けてもらえませんか」とお得意さんに頼み込んでみる懸命さも必要です。こうすると、お得意さんの中には、かつて営業で厳しい経験をした人もいて、「いつもお世話になっているから、協力するよ」と応じてくれることがあるのです。そうした努力の甲斐あって、2人は2月に見事に巻き返してくれました。本当に感謝しています。

「苦しみは何度も経験すると快感に変わる。そこを突破すればさらに強くなれるから」と山口社長は語る(写真:菊池一郎)

 話が少し横道にそれましたが、営業をしながら「お客さんは今、こういう心理状態なのではないか」と感じたら、すぐその仮説に基づいて行動に移す。そして結果を見て仮説が正しかったかどうかを判断する。このスピード感が重要だと改めて感じています。

(構成:久保俊介、編集:日経トップリーダー

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日経BP社は、山口勉社長の著書『「脱・値引き」営業』を発刊しました。周囲を大手家電量販店に囲まれたり、店の移転を余儀なくされたりしながら、なぜ20年連続黒字を達成できたのか。値引きせずに顧客の心をつかんで商品を売るコツについて、具体的なエピソードを豊富に盛り込んで解説しています。ぜひご活用ください。詳しくはこちらから。