東証は組織ぐるみに対しどのような判断を下すのか

 自主規制法人は元金融庁長官の佐藤隆文氏が理事長で、東証幹部の2人の常務理事に加えて、弁護士の久保利英明氏、元日本公認会計士協会会長の増田宏一氏、ニッセイ基礎研究所から京都大学大学院教授になった川北英隆氏の3人が外部理事を務める。いずれも「正論」を重んじる人たちで、ナアナアで済ます事を嫌う。

 11月になって発覚した問題も、彼らの態度を硬化させている。11月11日の中間決算で、福岡市にある子会社で営業担当者が10年以上にわたって架空売り上げを計上していたことを、東芝が明らかにしたのだ。

 水増しの累計額は5億2000万円と、問題になった東芝本体の不正会計に比べればごく少額だが、内部管理体制の改善が課題になっているタイミングだけに、東芝は苦しい立場に追い込まれている。

 東芝の場合、「個人の犯罪」として元経営者が裁かれる可能性がほぼ無くなっただけに、組織としての犯罪に対して東証がどういう判断を下すのかが焦点になってきたわけだ。

証券監視委と検察の認識に、大きなギャップ

 証券監視委の委員長だった佐渡氏は退任会見で、東芝問題について「個別の事案を越えて監視の在り方を検討すべき問題だと思う」と指摘していた。証券監視委からすれば絶対に見過ごすことができない粉飾と、検察の立場から刑事事件化するに足るかどうかという事件との間に、大きな認識ギャップがあることが、今回の東芝事件では明らかになった。

 検察はあくまでも社会正義の観点から裁くべき犯罪かどうかを見ているのに対し、証券監視委の場合、資本市場の規律を保つために厳罰が必要かどうかという視点が重要になってくる。

 最近、証券市場に上場する企業の間で、「上場詐欺」まがいの事例が目立つようになった。証券市場を使えば、簡単に投資家をだまし多額の現金を手にすることができる。こうした市場を食い物にする輩を放置すれば、証券市場に対する投資家の信頼自体が大きく揺らぐことになる。

「粉飾をやれば刑務所行き」という危機感が必要だ

 これは何も新規に公開する企業だけの話ではない。日本を代表するような伝統的な企業は、長年、資本市場を利用し、投資家に支えられて成長することができてきた。「軽度の粉飾決算ならば、許される」というムードが広がれば、世界の中で日本の市場は信じられない不公正な鉄火場だという認識が広がってしまう。

 「検察がきちんと事件化して、粉飾をやれば刑務所行きだという危機感を経営者に持たせるべきだ」と東証関係者のひとりは言う。だが、外部理事がどんなに怒っていても、それで東芝を上場廃止にするのは難しい情勢だという。

 東証は自らの市場の信頼性を守るために、どうやったら粉飾を根絶できるか、上場廃止制度の再整備を含めて、もう一度真剣に考えるべきだろう。