検察の発想では、「罪に問うまでもない」

 2008年度から2013年度までの6年間に税引き前利益を2781億円もかさ上げしていた粉飾の影響が「軽微」だったというのは、資本市場の番人である証券監視委からすれば、口が裂けても言えない事だと思うが、どうやら検察の発想では、罪に問うまでもない、ということになるらしい。

 東芝の不正会計問題は、会社ぐるみの利益操作、つまり粉飾としては歴史に残る事例だろう。東芝や監査法人が課徴金を受けているとはいえ、これで幕引きとなって禍根は残らないのだろうか。

エンロン事件では、経営幹部は刑務所へ

 「(米国で起きた不正会計の)エンロン事件では当時の経営幹部が刑務所にぶち込まれている。なぜ東芝では誰も刑務所に入らないのか。信じられない」と米国のヘッジファンドの幹部は語る。投資家を欺く不正に対して徹底的に厳しい姿勢を取る米国の市場関係者からすれば、東芝を「大目に見る」日本の市場は「異質だ」ということになる。

 経営者の刑事責任が問えず、「個人の犯罪」であるとすると、「会社ぐるみの犯罪」だということになる。東芝は、東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定されている。特設注意市場銘柄とは、内部管理体制に問題がある企業などが指定され、1年たってそれが改善されたと認められれば、指定解除されるというものだ。投資家に注意喚起しているわけである。

 東芝は、指定から1年が過ぎた9月15日、「解除」を申請する書類を東証に提出した。これを受けて東証が審査に入ったが、その結論がなかなか出ないのだ。

会社ぐるみでなかったオリンパスは、上場廃止を免れたが…

 オリンパスの場合、元経営者が「個人の犯罪」であることを受け入れたため、オリンパスという会社自体は上場廃止を免れた。会社ぐるみではなかった、ということで、罪一等を減じたのである。

 当時の東証のルールでは、重大な粉飾決算をした場合には、上場廃止にする規定があったが、この事件をきっかけに「特設注意市場銘柄」という仕組みを作った。粉飾即上場廃止では、経営者ではなく株主が損失を被ることになってしまう、という批判が強かったためだが、東証自身が上場廃止という“死刑判決”を下したくないという思いが背後にあるのは間違いなかった。

 特設注意市場銘柄も、指定から1年半たって内部管理体制が改善したと認められない場合は上場廃止になることになっている。東証は自主規制法人が1月にも結論を出す見通しだが、最終判断をする理事から、すんなり解除することへの抵抗感が示されているという。東芝はコーポレートガバナンスを改善するなど、2度と粉飾は起きない体制が出来上がったとして「内部管理体制確認書」を提出しているが、それを額面通りに受け取っていいのか、というわけだ。

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