「証券界の鬼平」佐渡賢一氏の退任により、東芝不正会計問題における歴代社長の責任問題は「幕引き」となる可能性が高まった。(写真:ロイター/アフロ)

証券界の鬼平、佐渡賢一氏の退任

 3期9年にわたって証券取引等監視委員会委員長を務めた佐渡賢一氏が12月12日に退任した。「証券界の鬼平」とも評され、公募増資インサイダー問題や、AIJ投資顧問の年金詐欺事件、オリンパスの巨額損失隠し事件などを指揮した。

 そんな佐渡委員長の退任で「幕引き」となるのが東芝の不正会計問題での歴代社長の責任問題。証券監視委は、東芝による巨額の利益かさ上げについて、西田厚聡・元会長や佐々木則夫・元副会長、田中久雄・元社長らの責任は明らかだとして、東京地検特捜部に刑事告発するよう求めていたが、検察側は立件は難しいという姿勢を崩さなかった。

 検察に対して佐渡氏は繰り返し再考を求めていたとされるが、退任によって刑事告発は見送られる可能性が高まった。退任会見で佐渡氏は「調査は進捗していると思っている」と述べたが、一方で、「検察との関係などいろいろと検討すべき事案であり、新しい委員会で新しい視点で判断していただきたい」として、後任の長谷川充弘・元広島高検検事長に期待をつないだ。もっとも、9年前に検察庁を退任した佐渡氏に比べれば長谷川新委員長はより検察の立場に近いと見られ、検察の判断を優先することになると見られている。

東芝の歴代社長は「粉飾の指示はしていない」

 なぜ、検察は歴代社長の刑事告発に消極的なのだろうか。

 ひとつは、歴代社長が、利益をかさ上げする粉飾の指示はしていないと、頑なに関与を否定していることだとされる。利益目標を達成するための「チャレンジ」を強く求め、現場にハッパをかけたものの、不正に数字をかさ上げすることまでは指示していないと強弁しているようだ。オリンパスの巨額損失隠し事件では、元社長らが隠蔽を指示していたことを認めたため、個人としても刑事訴追された。東芝の元経営者たちは「個人の犯罪」であることを認めていないのだ。

 もうひとつ、検察が刑事告発には当たらないとしているのは、利益のかさ上げによって投資家が投資判断を誤ったとは言い切れないからだという。証券監視委の調査畑に在籍した経験を持つ官僚は「売上高が6兆円を超える東芝で1期あたり最大数百億円の利益をかさ上げしたからと言って、投資判断を歪めたと認定するのは難しい」というのだ。