医師の人件費などは引き上げられる見通しだ。

 増え続ける医療費の削減がまたしても遠のくこととなった。

 政府・与党は、2018年度の診療報酬改定で、薬や医療材料の公定価格である「薬価」部分は1.3%程度引き下げるものの、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分については0.55%引き上げる方針を固めた。財務省の審議会などは医療費の増加を抑えるには「本体」部分のマイナス改定が必要だとしていたが、自民党は有力な支持母体のひとつである日本医師会の主張を受け入れた。診療報酬は2年に1度、見直されているが、「本体」部分の引き上げは6回連続。前回2016年度の引き上げ率だった0.49%を上回ることで、医師会側の「完全勝利」となった。

 診療報酬全体ではマイナス改定になる見通し。もっとも、「薬価」は実勢価格がすでに従来の公定価格を大幅に下回っており、新「薬価」はそれに合わせる意味合いが強い。政府は、2018年度の医療費の自然増加分が6300億円に達すると試算、2015年6月に閣議決定した「2016~18年度の自然増を計1兆5000億円に抑える」という目安を達成するためには1300億円の「圧縮」が必要だとしてきた。実際には、薬価を実勢に合わせるだけで1500億円の圧縮が実現、薬価の引き下げで「財源」が生まれたとして「本体」部分の引き上げに突き進んだ。

 政府が試算する「自然増」自体が正確かどうか不透明なうえ、実勢から乖離した薬価を引き下げることで、「目安」が達成できたとする姿勢からは、増え続けている医療費を抜本的に圧縮しようという意欲はうかがえない。

 国民医療費は2015年度には42兆3644億円と3.8%、1兆5573億円も増え、過去最高を記録した。国民所得の10.91%が医療費に回っており、日本は世界有数の「医療費大国」になっている。

 国民1人当たりに直すと、33万3300円を使ったことになり、前の年度に比べて1万2200円も増えた。

 にもかかわらず、医療費負担が増えている実感が乏しいのは、国や地方による「公費」負担が大きいことや、健康保険によって、病気にかかっていない健康な人たちも「広く薄く」負担しているためだ。「患者負担」分は国民医療費の財源の11.6%に過ぎない。実際に窓口で医療費を支払っている患者の負担感はそれほど大きくなっていない。これが医療費に対する感覚を鈍らせている、とも言える。