不正会計によって東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定されてきた東芝。その審査を行ってきた日本取引所自主規制法人は、内部管理体制が改善されたと判断。10月12日付けで指定が解除された。東芝をチェックしてきたPwCあらた監査法人は内部統制について「不適正」としたにもかかわらず、自主規制法人は上場廃止から東芝を救ったことになる。

 資本市場関係者やメディアからは疑問の声も上がったが、これに対して、理事長の佐藤隆文・元金融庁長官が、月刊誌に手記を公表。監査制度や監査法人を痛烈に批判している。監査が専門である青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科の八田進二教授に聞いた。

(聞き手はジャーナリスト 磯山友幸)

会計監査の第一人者である青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科の八田進二教授

今の資本市場では監査意見が「絶対」

日本取引所自主規制法人の佐藤隆文理事長が月刊『文藝春秋』2017年12月号に手記を寄せ、監査や監査法人のあり方について苦言を呈しています。

八田進二教授(以下、八田):かつて金融庁長官を務めて現在も自主規制法人のトップにある人が公式の会議などではなく、民間の一雑誌でこうした重要な発言をしている事は驚きです。

 半世紀にわたる日本の監査制度に対して明確にノーを突き付けているのではないでしょうか。現在行われているディスクロージャー(企業の情報開示)制度や監査制度について、かなり認識が異なっているのに驚きました。

手記では、「監査法人の意見を無条件で絶対視するのは資本市場のあり方として危険なことだ」とまで言っています。

八田:では、投資家や株主は何を信用すればいいのか、是非お聞きしてみたいですね。今の資本市場の仕組みでは、制度上、監査意見は絶対という事になっているのです。野球の審判が絶対なのと同じです。それを否定したら、誰が決算書の信用を担保するのでしょうか。取引所や自主規制法人がすべてチェックするのか。それは人的にも能力的にも難しいのではないでしょうか。

 自主規制法人のトップは本来、「市場の番人」として、監査制度をどう確固としたものにするのかを考える立場のはずです。現行の監査制度を否定するような発言は、私的な思いを吐露したものだとしても、問題ですね。