健康保険組合の42%が赤字決算に

 もちろん、不正利用を防ぐのが狙いだが、そうなると、日本人で海外に居住している留学中の子弟などをどうカバーしていくのかなど、制度設計に工夫が必要になる。本来、健康保険制度は、収入に応じて保険料を支払っている人とその扶養親族らが、等しく医療を受けられることが前提になっている。外国籍だからといって仕組みから排除していけば、保険そのものが成り立たなくなっていく。

 そうでなくても健康保険の仕組みは窮地に立たされている。日本の健康保険制度の一翼を担ってきた大企業などの健康保険組合の解散が相次いでいるのだ。

 世の中の関心を呼んだのは、加入者16万4000人の日生協健康保険組合と、加入者51万人の人材派遣健康保険組合が解散を決めたこと。人材派遣健保は国内3位の規模だ。そうした主要健保までが解散に追い込まれているのは、保険財政が急速に悪化しているのが理由だ。

 健康保険組合連合会が2018年9月25日にまとめた1394組合の2017年度の収支状況によると、42%に当たる580組合が赤字決算だった。健康保険組合は、加入している社員の保険料で、社員やOBの医療費を賄うのが建前だが、国の制度で導入された、高齢者の医療費を賄うために拠出する「支援金」の負担が年々増加しているのだ。2017年度決算での全組合の「支援金」合計額は3兆5265億円と前年度に比べて7%も増えた。保険料の収入合計は8兆843億円なので、何と半分近い44%が支援金に回っている計算になる。

 厚生労働省がまとめた2017年度の「概算医療費」は42兆2000億円と前年度比2.3%増え、過去最大となった。概算医療費は労災や全額自費の医療費を含んでいない速報値で、総額である「国民医療費」の98%に相当する。

 概算医療費の増加が続く最大の要因は、75歳以上の医療費が大きく伸びていること。2017年度は4.4%も増加し、75歳未満の1.0%の伸びを大きく上回った。

 これは、高齢者の数が増えているためばかりではない。高齢者ひとり当たりの医療費で見ても75歳以上は大きく増えている。2017年度は94万2000円と、前年度の93万円に比べて1万2000円も増えた。ちなみに75歳未満は22万1000円だ。75歳以上の高齢者が使う医療費が現役世代など若年層に重くのしかかっている。しかも、働く現役世代の人口はどんどん減っているので、そうなると若年層ひとり当たりの健康保険料負担はどんどん大きくなっていく。

 同じ職場環境にある社員で組合を作り、その保険料で組合員の医療費を賄う健保組合の「相互扶助」の仕組みは、まさに保険の原理を使った効率的な仕組みだった。保険料は加入する社員と会社が折半で負担、企業が成長を続けていれば、若い健康な社員がたくさん入るため、医療費の負担も分散される格好になってきた。世界がうらやむ国民皆保険が成り立つ上で、企業の健保組合の果たした役割は大きい。