どうやっておカネを落としてもらうか

 そのためにはいくつかクリアしなければならない問題がある。

 まずはインフラ。空港や鉄道網、道路といったインフラの整備は日本はお手のモノなので、都市部を中心に公共事業による整備が進むに違いない。

 問題は宿泊施設。現状でも大都市や観光地は宿泊施設が圧倒的に不足している。これをどう賄っていくのか。都市部では新しいホテルの建設が相次いでいるが、これも長期にわたって旅行客が減らないという見通しが前提になる。

 地方都市ではなかなか新規投資に踏み切れない観光業者が多い。というのもバブル期に社員旅行などの団体客目当てに大型化したものの、その後のバブル崩壊で稼働率の低下に苦しんだ旅館やホテルが少なくないからだ。

 もうひとつは、旅行客にどうやっておカネを落としてもらうか。人数を大量に呼び込むこと以上に、より多く消費をしてもらう事の方が日本経済にとって重要なのは明らかだ。中国からのクルーズ船の増加で、訪日客数が増えても、訪問地での消費増に結び付かないのでは意味がない。

 ではどうするか。

日本の観光産業は「薄利多売型」モデルから脱却すべし

 キーワードのひとつは「本物」を突き詰めることだろう。外国人の急増を機に、日本の観光産業は薄利多売型のデフレモデルから脱却するべきだろう。ホテルや旅館にしても、日本の「本物」のおもてなしを提供することで、むしろ値段は上げていく。高付加価値型で満足度の高い施設や料理、サービスを提供すれば、価格が高くても世界から旅行者はやって来る。

 設備投資にしても新しくキャパシティを広げることよりも、質を上げるためにおカネを使うべきだ。そして単価を引き上げる。そのためには訓練の行き届いた従業員が必要で、給与も引き上げていかなければならない。まさに「経済の好循環」が地域経済で始まることになる。

地域に埋もれている「宝」を掘り起こし、磨きをかける

 駆け足で通り過ぎていく観光客にどうやっておカネを落とさせるか。その地域でしか手に入らない「本物」に磨きをかけて売っていくことだろう。また、観光地自体も世界中から人が集まるような本物に磨き上げる必要がある。そのためにはストーリーが不可欠だ。

 幸い日本は歴史の長い国で、観光地や文物には歴史と共に育ってきた長いストーリーがもともとある。それをSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などで発信していく必要がある。本当の「クール・ジャパン」である。

 つまりは、地域に埋もれている「宝」を掘り起こし、それに磨きをかけて、世界に発信していくことが不可欠なのだ。こうした取り組みに政府が旗を振るのも良いが、最も重要なことは、地域に根差した人たちが自ら知恵を絞って宝に磨きをかけることに他ならない。本物を求めてやってくる人たちは、世界中に山ほどいるのだ。