議決権行使の個別開示で一歩前進
日本企業にガバナンスを効かせようとした場合、長年にわたって最大の障害であると指摘されてきたのが株式持ち合いだった。そこに手をつけるとしたわけだ。
その再興戦略のたたき台になった自民党の「日本再生ビジョン」ではさらに踏み込んで「銀行等金融機関などの株式保有規制強化」が盛り込まれていた。
銀行は現在、企業が発行する株式の5%まで保有することが許されている。前述の通り、米国などでは銀行による株式保有は原則禁止されている。日本もこれにならって銀行による株式保有の規制を強化すべきだとしたのだ。
その後、コーポレートガバナンス・コードの導入などで持ち合いに関する意識は大きく変わりつつある。生命保険会社や信託銀行など機関投資家は、スチュワードシップ・コードの改正を受けた議決権行使結果の個別開示を今年から行うようになり、保有株の議決をどう行ったかが明らかになるようになった。機関投資家の中には、東芝の取締役選任議案に反対するところなども出始めている。
だが、銀行などの持ち合い株については、議決権行使内容を開示する義務はない。大手銀行が東芝の総会でどんな行動をとったかは分からないわけだ。
東芝を巡る対応は、債権者と株主の間に、明らかに利益相反が存在することを示した。日本もそろそろ銀行による事業会社株の保有を原則禁止にすべき時期に来ているように思う。
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