東電救済と同じことが起きつつある

 東京電力が福島第1原子力発電所の事故を起こして経営が成り立たなくなった際、東京電力を破綻処理して国民負担を小さくしようという意見が霞が関にもあった。最終的には東電を存続させることで決着したが、当時の政権幹部の元には大手銀行の幹部が通い詰め、東電存続の重要性を訴え続けた。

 もちろん、東電を潰せば、巨額の貸し付けの債権カットを求められることが必定だったからだ。結局、東電は存続し続け、東電株は上場廃止にもならなかった。一見、上場廃止にならなかったことで株主が恩恵を受けたように見えるが、実態は銀行が最大の恩恵を受けたと言って過言ではない。東芝でも、今まさに同じことが起きようとしている。

 東芝の株主からすれば、虎の子の医療機器や半導体を売却してしまえば、将来の収益源を失うわけだから、株主価値を大きく毀損することになる。これまで東芝は臨時株主総会などで、こうした事業の分社化と売却の承認を得てきたが、純粋に株主の立場からすれば、反対の声が大きく出てもおかしくない。しかし、実際には総会で圧倒的多数で売却が承認されてきた。

 それはなぜか。銀行や保険会社などが東芝の大株主として賛成したからである。だが、銀行や保険会社は東芝に対する貸付金の回収に主たる関心があるのだ。債権を保全するために株主権を行使したと言ってもいい。

 つまり、企業に融資をする「債権者」の立場と、投資をする「株主」の立場は相容れない、利益相反関係にあることを、東芝の「解体」は如実に物語っているのだ。米国では、銀行による事業会社の株式保有は禁止されてきた。債権者と株主で利益相反に陥ることがわかっているからだ。

 日本の場合、長年、銀行を中心とする株式持ち合いが続いてきた。バブル崩壊以降、持ち合いの解消が進んできたが、まだまだ老舗企業の大株主には大手銀行などが名を連ねる。金融庁は、銀行が大量の株式を保有していると、株式市場が乱高下した場合に銀行経営を揺さぶるとして、縮小することを求めているが、実際は完全には消えていない。

 政府も2014年6月に閣議決定した成長戦略「日本再興戦略 改訂2014」で、「日本企業の稼ぐ力を取り戻す」として、コーポレートガバナンスの強化をいの一番に掲げた。その柱として、コーポレートガバナンス・コードの導入が打ち出された、その後実現しているが、再興戦略の中にはこんなくだりがあった。

 「持ち合い株式の議決権行使の在り方についての検討を行うとともに、政策保有株式の保有目的の具体的な記載・説明が確保されるよう取組を進める」

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