東芝が債務超過になって困るのは誰?

 東芝が白物家電の売却を美的と合意したのは、2016年3月末。決算期末で債務超過に陥らないために、ブランドごと白物家電を売ったのである。ブランドよりも債務超過回避が優先されたわけだ。

 このタイミングで、医療機器子会社の東芝メディカルシステムズもキヤノンに売った。将来の成長を担うと期待された虎の子の事業をあっさり売却したのだった。東芝の子会社ではなくなった今も東芝メディカルの名前を使い、キヤノン・グループと添え書きされている。

 では、技術の流出を避けるために、東芝を守ろうとしているのだろうか。

 今年3月頃、首相官邸から霞が関の関係各所に「東芝を守れ」という指示が飛んだ、と言われる。東芝が上場廃止になり潰れることになれば、東芝が持つ半導体技術が、中国や韓国などのライバルメーカーに流出する、それを絶対に防げ、というのが理由だった。これを受けて経済産業省は東芝の半導体子会社である東芝メモリの売却先探しに全面的に協力する。

 すったもんだの末に決まった売却先は米ファンドのベインキャピタルを中心とするグループで、ここには韓国の半導体大手SKハイニックスも参加していた。海外への技術流出をさせない、と言っていたはずが、一転して韓国企業も加わる「日米韓連合」に売却が決まったのである。東芝を守りたい本当の理由は「技術流出の回避」ではなかった、ということになる。

 では、東芝の社員を守るためなのか。

 これも違うようだ。分社化して売却された事業で働く人たちの雇用を守っているのは、美的集団やキヤノンなど売却先の企業である。では稼ぎ頭をどんどん失っていく東芝本体の社員の雇用は確実に守られるのか。儲かっている事業売却で空洞化が進めば、雇用を維持することは難しくなる。それを察知した中堅若手の社員が、今、東芝を次々に去っている。債務超過を回避し、上場を維持することは、社員を守ることにはなっていない。

 では、何のために「東芝」という会社組織を守ろうとしているのか。どうやら「銀行」の利益を守るために、債務超過や上場廃止を避け、収益事業を売却しているのではないか、という結論にたどり着く。

 債務超過になると、東芝に巨額の資金を貸し付けてきた銀行は、「要注意先債権」あるいは「破綻懸念先債権」として、引当金を積む必要に迫られる。つまり、銀行の業績に大きな影響を与えるのだ。当然、融資責任や業績悪化の責任を経営陣は追及されることになる。

 会社更生法などの適用を申請して東芝が「再建」を目指した場合、当然、銀行は融資の相当割合を免除する「債務カット」に応じなければならなくなる。銀行など融資者の立場から、債権を保全しようと考えれば、債務超過や上場廃止、ましてや法的整理などは受け入れられない話なのだ。

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