「平均寿命」よりも「健康寿命」を重視

 だが人口構成や人口密度だけでは説明できない「西高東低」の傾向もある。都市部であるにもかかわらず大阪府の1人当たり医療費は36万4200円と平均を大きく上回る。福岡県の場合はさらに高く37万9300円だ。ちょっとした体調不良でも気軽に病院に駆け込む人が多かったり、医療機関側にも医療費節約の発想が乏しいなど、何らかの「地域性」が潜んでいると考えられている。

 医療費の公費負担が地方自治体の財政に重くのしかかるようになったことで、全国の自治体などが「平均寿命」よりも「健康寿命」を重視した取り組みを行うようになってきた。いくら寿命が長くても、病院で寝たきりで過ごす年月が長くては「人生の質」は低い、という発想だ。長生きするからには健康で長生きすることを目指すべきだ、というわけである。

 もともと塩分の多い食事が取られてきた地域で減塩食を普及させたり、健康維持に運動を奨励するなど、病気にならないための取り組みを広げている。厚生労働省も都道府県別の「健康寿命」を公表するなど、後押ししている。

 ちなみに2015年の「健康寿命」のトップは男女とも山梨県。男性は次いで沖縄、静岡、石川、宮城の順になっている。女性は静岡、秋田、宮崎、群馬だ。

 平均寿命(2013年)は男女共に長野県がトップだったが、健康寿命となると長野県は男性は18位、女性は16位である。

 長野県松本市では「健康寿命延伸都市」を宣言して、糖尿病の重症化予防などに取り組んでいる。糖尿病が悪化して人工透析が必要になった場合、多額の医療費が発生するが、その費用は大半が公費負担となって財政にのしかかる。人工透析患者をできるだけ出さないようにするなど、健康寿命を延ばす取り組みが積み重なれば、医療費の総額の圧縮につながっていくに違いない。

 また、終末医療についてももっと議論をすべきだろう。食事が難しくなった高齢者に施す「胃ろう」が、人生の質を下げているという批判が高まり、胃ろうを巡る議論が活発になった。確かに胃ろうを実施すれば、栄養補給が簡単になり、寿命は延びるかもしれないが、それが健康寿命と言えるかどうか。最近は自分の人生の幕引きを考える「終活」がブームになっている。自らの「死に方」を考える人が増えれば、終末期の検査や投薬、手術に莫大な医療費をかけることに意味を見出さない人も増えるだろう。