受診延べ日数と入院期間は減少

 もちろん、様々行われている医療費抑制の努力の跡もうかがえる。75歳以上の高齢者一人当たりの医療費は2015年度の94万8000円から93万円に2%減っている。また、医療機関にかかった受診延べ日数も0.7%減った。入院期間の減少が続いているほか、入院外の受診日数も減った。入院の平均在院日数は31.5日と、前年度の31.9日から短くなった。

 40兆円を大きく超えてきた医療費の圧縮は喫緊の課題だ。「平成27年度 国民医療費の概況」によると、確定値である2015年度の国民医療費42兆3644億円のうち、保険料で賄われているのは20兆6746億円と48.8%にすぎず、患者負担分の4兆9161億円(全体の11.6%)を合わせても6割強だ。残りの38.9%、16兆4715億円は公費負担となっており、国庫や地方財政を圧迫している。国庫の負担は3.2%増加、地方負担は5.4%も増えている。GDP(国内総生産)に占める医療費全体の割合は2014年度の7.88%から2015年度は7.96%に上昇した。

 ちなみに、保険料の増加が続いており、2015年度は被保険者が払う保険料負担が3.5%、事業主の負担が4.8%増えた。受診時の患者の自己負担割合をもっと増やすべきだという声もあるが、2015年度の患者負担分は前年度に比べて2.9%増えている。これ以上の保険料の引き上げや患者負担の増加は、医療保険制度全体の仕組みを大きく揺るがしかねない。やはり、医療費全体の増加を止めなければならないだろう。

 そうなると高齢者の高額医療をどう抑制するか、という議論を避けることはできない。確定数値である2015年度の国民医療費の統計では、さらに細かい年齢区分ごとの医療費を見ることができる。医療費全体の59.3%は65歳以上の人が使っている。中でも70歳以上が47.8%と全体のほぼ半分を使う。75歳以上に限っても35.8%を占めるのだ。ここを抑制しない限り、医療費は減らない。

 1人当たりで見るとより問題が鮮明になる。2015年度の人口1人当たりの国民医療費は33万3300円。65歳未満は18万4900円である一方で、65歳以上は74万1900円もかかっている。70歳以上だと84万円、75歳以上になると92万9000円だ。45歳から64歳の中年世代でも28万4800円なので、その多額さに驚く。しかも、45歳から64歳までの医療費増加率が2.3%に対して、70歳以上は2.8%と伸び率も大きくなっている。

 厚生労働省は医療費の地域格差に着目して、対策を取ろうとしている。人口1人当たりの国民医療費は地域ごとに大きな違いがある。地域別では「西高東低」がはっきりしており、東日本は全国平均(33万3300円)を下回る都県が多い半面、西日本は上回る府県が多い。

 都道府県別で最も1人当たり国民医療費が少ないのは埼玉県で29万900円。ついで千葉の29万1100円、神奈川県の29万7900円となっている。人口構成で比較的若年層が多いということも大きく影響しているとみられる。

 一方で、医療費が最も高いのは高知県の44万4000円で、次いで長崎県の41万1100円、鹿児島県の40万6900円となっている。高知県の場合、県面積が広い割に人口が少ないため、医療機関の集積度が低く、どうしても入院する割合が高いことなどが1人当たり医療費を増大させているとみられる。