国家的な課題よりも仲間の人事を優先?
確かに、入閣待機組を大量に入閣させたが、野党が言うような「在庫一掃」だけが理由だと切り捨てるのはやや酷だ。総務大臣になった石田真敏氏は和歌山県海南市長を2期務めた経験を持つほか、財務副大臣や党税制調査会の地方税担当のインナー(幹部会メンバー)なども務めた。
防衛大臣になった岩屋毅氏も防衛庁長官政務官や外務副大臣を経験、安全保障問題には詳しい。情報通信技術(IT)政策担当大臣になった平井卓也氏は、まさに党内きってのIT通だ。
問題は、ここが正念場というところで交代させた大臣が目立ったこと。来年の参議院議員選挙に向けて「地方」が大きなテーマになるが、ふるさと納税制度の見直しなどを表明した野田聖子氏を交代させたうえ、地方創生・規制改革の内閣府特命担当大臣だった梶山弘志氏も交代、片山さつき氏にバトンタッチさせた。
野田氏は金融庁がらみの不祥事もあり、交代は致し方ないが、地方創生の政策に力強さが見えていないだけに、新大臣の力量が問われる。
自民党総裁選で地方党員票が予想以上に石破氏に流れ、党員票の45%を石破氏が得たのも、地方経済や地域活性化に対する不満が、地域には根強くあるためとみられる。この分野で安倍内閣が目に見える成果を上げられるかどうかは、来年の参議院議員選挙に大きく影響しそうだ。
厚生労働大臣だった加藤勝信氏を1年で交代させたのも、内閣の「本気度」を疑わせる人事だった。内閣府特命担当大臣として「働き方改革」に取り組んだ期間を合わせれば3年になるとはいえ、抜本的な社会保障改革は待ったなし。増え続ける医療費への対策は進んでいない。安倍氏も総裁選の重点項目として5つ挙げた中で、経済に次いで2番目に掲げたテーマだった。もちろん国民の関心も高い。
加藤氏は党の総務会長に抜擢されたが、国家の重要課題よりも、安倍首相を支える仲間の「人事」を優先したかのように映っている。
肝心の「アベノミクス」を巡る人事は留任が目立った。
財務省の公文書改ざん問題にほおかむりしたまま、麻生太郎副総理が財務相を続投となった。国民民主党の玉木雄一郎代表は、「政治がまったく責任を取らないという1つの宣言だ」と厳しく批判したが、麻生氏はどこ吹く風。批判を受けてもやり過ごしていれば、国民は早晩忘れると考えているのだろうか。来年10月の消費税増税に向けて、消費の落ち込みを防ぐ対策などが求められるが、麻生氏で乗り切ることができるのか。
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