経営者の報酬にも「ガバナンス」が不可欠

 欧米ならば、不正な業績を基に支給された巨額の報酬は返還せよ、と株主から求められるのが必至だが、「クローバック」がない日本では問題発覚後も返済せよという声が上がらない。東芝の佐々木則夫・元副会長も、情報開示されている2012年3月期からの3年間だけで3億2800万円の役員報酬を得ていた。

 今後、日本の経営者の報酬はさらに増加していくことになるだろう。経営手腕が業績を大きく左右する激動の時だけに、業績を上げた経営者が高額の報酬を手にするのは悪いことではない。利益が増えれば、株主も従業員も潤うことになると考えれば、安いものだろう。

 だが、そのためには、その報酬が「適正」である必要がある。業績が上がっていないのに高額報酬をもらうような「理屈に合わない」高額報酬に対しても、欧米でも機関投資家などが反対票を投じるようになっている。日本でも経営者報酬の決定や支払い方にガバナンスを効かせることが重要になる。

 2017年6月に閣議決定された成長戦略「未来投資戦略2017」では、コーポレートガバナンスの強化策として、いくつかの取り組み方針が盛り込まれた。「形式から実質へのコーポレートガバナンス・産業の新陳代謝」と題された項目には、「経営システムの強化、中長期的投資の促進」策として、「企業における指名・報酬委員会の活用状況、経営経験者の社外取締役についての活用状況、インセンティブ報酬に関する導入・開示の状況等を本年度中に分析・公表する」とされている。

 金融庁と東京証券取引所は、企業のあるべき姿を示した「コーポレートガバナンス・コード」を作成し、上場企業に遵守するか、遵守出来ない場合にはその理由を開示するよう求めている。2015年に制定されて以降、フォローアップが行われ、逐次改訂されている。成長戦略で求められている「インセンティブ報酬に関する導入・開示の状況の分析」が2017年度中に終われば、それをガバナンス・コードに反映させる作業が不可欠になる。

 欧州で広く実施され、米国で制度として導入されている「セイ・オン・ペイ」などを日本の株主総会でどう導入していくかも課題だろう。セイ・オン・ペイとは前述のルノーの株主総会で行われているような、経営者の報酬に対して株主として株主総会で意見を表明する投票の仕組みである。

 金融庁は近くコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会合を再開する見通しだ。そうした中で報酬ガバナンスのあり方が大きな焦点になるのは間違いなさそうだ。日本企業に「稼ぐ力」を取り戻させ、その恩恵を従業員や株主に広く還元させるためにも、経営者に適切なインセンティブを与えることは重要だろう。そのためにも、欧米で行われている水準の制度整備は不可欠だ。