実はゴーン氏の高額報酬は昨年も総会で問題視され、賛成票よりも反対票が上回るという異常事態になった。フランスのこの投票制度には拘束力がないのだが、ゴーン氏はボーナスを減額する対応を迫られることになった。しかもルノーの議決権の2割を握る筆頭株主のフランス政府も反対票を投じたと報じられている。

 一方で、ゴーン氏は日産自動車からも高額報酬を手にしている。2016年3月期には、ルノーの報酬とは別に、日産から10億7100万円の報酬を得た。ここで対照的なのは、ルノーの報酬の多くが長期インセンティブであるストックオプションだったのに対して、日産からの報酬は全額現金報酬として手にしていることだ。

 日本の株主総会では、役員報酬の総枠について議決をすることになっているが、それを誰にいくら配分するかについては取締役会に一任されている。CEOにいくら報酬が払われたかは、1億円以上の場合、有価証券報告書に記載されることになっているため、公表されているが、有価証券報告書が提出・公開されるのは株主総会の後である。フランスのように株主の厳しいチェックもなく、巨額の報酬がキャッシュで支払われているのが今の日本なのだ。

粉飾時も巨額報酬を得ていた東芝経営陣

 また、欧米では「クローバック」と呼ばれる条項が報酬契約に盛り込まれるケースが多い。経営者として在任した期間中の不祥事が後に発覚した場合、すでに期間中に支払われた報酬を返還するというもの。自らの高額報酬を維持するために不正を働くなど、報酬の「取り逃げ」を防ぐための規定だ。

 こうした規定がないために、日本では「もらい得」が横行している。典型的な例が粉飾決算に揺れ、その後も経営危機が続いている東芝である。

 東芝は2010年3期に197億円の最終赤字を出していた。当時の会長だった西田厚聰氏は取締役としての報酬8500万円と、執行役としての報酬1800万円との合計額1億300万円を固定報酬として受け取っていた。業績連動報酬としても400万円を得ている。

 赤字なのに1億円を超す報酬をもらう感覚にも驚くが、おそらく税引き前では272億円の黒字だったことで許されていた。ところが、その後に明らかになった粉飾決算による「かさ上げ」を修正すると、税引き前損益でも143億円の赤字だったことが判明している。

 西田氏ら歴代経営者は「粉飾をやれとは指示していない」と一切責任を認めておらず、刑事訴追もされていない。しかし、利益のかさ上げによって高額の報酬が維持されたと考えると、粉飾決算によって個人的な利益を得ていたと見ることもできる。粉飾で利益をかさ上げしていた2010年3月期から2014年3期の間だけで西田氏は6億円を超える役員報酬を手にしていたのだ。

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