人口減少が深刻な極東のシベリア

 外務省のロシア情勢に詳しい幹部の話によると、ロシアの人口減少は深刻で、とくに極東のシベリアでは人口が大きく減っている。一方で、シベリアの南の中国は膨大な人口を抱えており、国境をはさんだ人口バランスの悪さにロシアは危機感を持っているという。

 つまり、中ロが親密さを増せば、人口の多い中国に経済活動の主導権を握られるのが明らかだというわけだ。そこで、日本との経済協力がロシアの戦略上、重要になって来る。そういうシナリオの下で、安倍外交はロシアに協力を持ちかけているのだ。

 ロシアの人口を増やすのに最も手っ取り早い方法は、出生率を上げることではなく、死亡率を下げること。ロシア人男性の平均寿命は64歳と言われる。日本人男性はほぼ80歳だから15年短いのだ。このため健康で長生きさせるための医療制度や施設の整備に日本が協力しようというのである。

ロシアにとって、安倍首相はG7への窓口

 クリミア併合以降、ロシアが国際社会の中で孤立を深めていることも、日本にとっては好機到来である。主要国(G7)の中でプーチン大統領との関係を最も保っているのが安倍首相であることは間違いない。ロシアからみれば安倍首相はG7への窓口でもある。

 もちろん、米国が日露関係の改善に抵抗する、という読みはある。日本を自由主義陣営に留め置くために、中国やロシアとの間に領土問題というクサビを打ち込んだのは明らかだ。それが戦後体制を規定してきた。だからこそ、オバマ大統領の広島訪問という「日米最終和解」が不可欠だったのだ。日米の信頼の絆を太くしなければ、日露関係の改善に踏み込むことはできなかったのである。

 日露平和条約が実現し、北方四島だけでなく、ロシア東部、シベリア地域での経済開発が動き出せば、日本経済にとっても大きなプラスになるだろう。今後、12月に向けて水面下で進む実務者協議で、どれだけお互いにメリットがあるかを共有できれば、戦後70年の「異常な事態」が終焉することになるだろう。