
全産業の当期純利益は18.9%の増加
企業が事業から得た利益のうち、配当や設備投資などに使わずに蓄えとして手元に残している「内部留保」が増加を続けている。全国3万社あまりの企業を調査する財務省の法人企業統計が9月1日に発表されたが、それによると2016年度末の「内部留保」は406兆2348億円と、初めて400兆円を超え、過去最高となった。
安倍晋三首相は「経済の好循環」を実現するために、経営者らに対して、過去の内部留保や利益の増加分を賃上げや設備投資に回すよう協力を求め続けている。賃金はようやく上昇の兆しが見え始め、企業が稼いだ付加価値のうちどれだけ人件費に回したかを示す「労働分配率」は下げ止まったが、まだまだ儲けが十分に分配されているとはいえず、結果、内部留保の増加に結びついている。
企業業績は好調さを維持している。アベノミクスの開始以降、円安水準が定着したことで、輸出企業を中心に採算が大幅に好転、利益が増えている。また、国内景気も明るさを取り戻しつつあり、内需型企業の業績も順調に伸びている。
金融・保険を除く全産業の売上高は1455兆円と前の年度に比べて1.7%増加、当期純利益は49兆7465億円と7兆9150億円も増えた。率にして18.9%の大幅な増加だ。
企業の儲けが大きく増えている一方で、なかなかその恩恵が従業員に及ばない。企業が生み出した付加価値の総額は5兆円あまり増え、298兆7974億円となったものの、そのうち人件費に回ったのは201兆8791億円。いわゆる労働分配率は67.5%ということになる。労働分配率はアベノミクスが始まる前の2012年度には72.3%だったが、毎年低下を続け、2015年度は67.5%にまで低下した。
安倍内閣は企業の国際競争力を維持するためとして法人税率の引き下げを行ったが、その恩恵は従業員には行かず、もっぱら内部留保として蓄えられる方向に進んだ。ちなみに2012年度末の利益剰余金は304兆4828億円だったので、4年で100兆円増加したことになる。
労働分配率が低下を続けてきたことには、麻生太郎副総理兼財務相らが政府の会議で苦言を呈するなど、問題視され続けてきた。安倍首相も財界首脳に対して繰り返し賃上げを要求。4年連続でベースアップが実現するなど、ムードは変わりつつある。
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