国の関与をさらに増やす方向に進んでいる

 本来は交付税による再配分を縮小し、自治体の自立を促すべきだと思うのだが、方向は逆に進んでいる。

 2008年以降、国は「法人事業税の暫定措置」というのを始めた。本来は地方税である法人事業税の一部を「地方法人特別税」という名の国税にして国が徴収、地方交付税の「原資」として再配分に回しているのだ。消費税率が10%に引き上げる段階で撤廃されることになっていたが、消費増税の先送りで撤廃も先送りされている。

 さらに2014年10月からは、地方税である法人住民税の一部を国税化し「地方法人税」を創設した。さらに総務省はこの国税化の割合を拡大しようと検討している。「地方間の財源調整」を名目に、さらに国の関与を増やそうとしているのだ。こうした「国税化」によって愛知県豊田市の場合、年間100億円近い財源が国に吸い上げられることになると試算している。

 かつて、小泉純一郎内閣から第1次安倍内閣の時期には地方分権を進める手法として「三位一体の改革」を行うとされていた。「国庫補助金の廃止や縮減」や「地方交付税交付金の見直し」を行うのと同時に、「国から地方への税源移譲」を進めるとした。この三つを同時に行うというところから「三位一体」と呼ばれたのだ。

地方への税源移譲計画はどこかに消えてしまった

 ところがその後、補助金の廃止や交付税の削減が行われたものの、地方への税源移譲は遅々として進まなかったため、地方自治体の財政が一気に悪化した。民主党政権は地方の困窮の声に応える形で、地方交付税の増額にカジを切った経緯がある。

 その後成立した第2次安倍内閣以降では、「三位一体の改革」という言葉はほとんど使われなくなった。地方への税源移譲はどこかへ行ってしまったのである。その代わりに出てきたのが「再配分強化」策としての、地方税の国税化なのだ。最近では「道州制」の議論もすっかり下火となり、地方の自立はほとんど議論にならなくなった。

いつまでも国が地方を支える仕組みでいいはずはない

 だが、そうした「国による丸抱え」とも言える政策で、地方の財政は改善していくのだろうか。国全体の財政も厳しい中で、いつまでも国が地方を支える格好でいいはずはない。

 もともと霞が関は再配分強化に動く「傾向」がある。再配分機能を拡大させれば、当然、それに伴う権限も大きくなるからだ。また、国会議員にとっても「再配分」は魅力的だ。地元の要望を聞いて国の事業を地方に持って行くという「昔ながら」の仕事が増えるからだ。つまり、霞が関にとっても、永田町にとっても「国税化による再配分強化」は自らの利権拡大につながるのである。

 霞が関の官僚に頼らずに税収を再分配する方法はないか。可能性があるのは「ふるさと納税」だろう。最近では返礼品競争にばかり注目した報道がされているが、自治体の「努力」によって税収を獲得しようとする制度が機能し始めたのは好ましいことだ。安倍内閣はこのふるさと納税の拡充に力を入れており、今年度からは企業版のふるさと納税もスタートした。

官僚による再配分 VS 納税者による再配分

 霞が関では「ふるさと納税」を批判する声が強いが、それは自分たちがコントロールできない「税の配分」が行われ、それがどんどん拡大していっているからだ。だが、考えようによっては、官僚が再配分するよりも、納税者が「選択」した結果、再配分される方が理屈に叶うことかもしれない。いずれにせよ、各自治体に創意工夫がもたらされたのは良いことだ。今後、企業版ふるさと納税で、地方自治体の知恵比べが始まるだろう。

 もっとも、そうした努力によって財政が改善しても、地方交付税制度で交付金が減らされるようなことになれば、何のために努力しているのか分からないということになりかねない。

 国土の均衡ある発展──。戦後、日本は、どの地方も同じように発展するのが良いことだ、という思想のもとに、地方自治政策が取られてきた。焼け跡から復興するには等しく物質的に満たされることが不可欠だったのだ。それを支えてきたのが地方交付税制度だったともいえる。

 だが、人々の感じる豊かさが多様化する中で、地域ごとに特色ある発展が不可欠になっている。そろそろ地方交付税制度を抜本的に見直すことが必要だろう。

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