アベノミクスの成果が一気に雲散霧消する危険性

 いつになったら消費は回復してくるのだろうか。

 明るさが見える統計数字が発表された。日本百貨店協会が7月24日に発表した6月の全国百貨店売上高概況である。店舗調整後の総売上高は前年同月比3.1%増と大幅に増加、2017年9月の4.4%増以来の高い伸びとなった。

 中でも百貨店がこのところ苦戦していた「衣料品」が4.3%増と高い伸びになったのが目を引いた。これは消費税導入による「反動減の反動」があった2015年4月の9.9%増以来の高い伸びだ。

 もしかすると、この衣料品の伸びは「経済好循環」が消費にたどり着いた結果かもしれない。4月以降の賃上げや6月支給のボーナスの増加が、消費に結びついたのではないか、そんな期待を抱かせる。というのも「紳士服・用品」の伸びが5.5%増と高かったのである。婦人服の4.7%増や子供服の5.1%を上回ったのは久しぶりのこと。女性の小物や子供服から始まる消費が、男性の背広にたどり着いたのは「賃上げ」の効果と言えるかもしれない。こうした消費の伸びによって4−6月のGDPはプラス成長になるとの見方が多い。

 問題は7−9月期も成長を維持できるかどうかだ。

 7月は大雨や猛暑など全国的な天候不順の影響で百貨店の売上高は再び前年同月比マイナスに陥った模様だ。消費に力強さが出てこないと、本格的な「経済好循環」は望めない。

 もう1つ、消費にプラスの効果をもたらす可能性があるポイントがある。厚生年金の保険料率の上昇が昨年9月で頭打ちになったことだ。2004年の法律改正で、厚生年金の保険料率は2005年から毎年9月に引き上げられてきた。2004年9月に13.58%(半分は会社負担)だった保険料率は、それ以降、毎年0.354%ずつ引き上げられ、2017年9月には18.3%になった。

 2004年と比べると、13年で4.72%も上昇。仮に基準となる給与が年400万円だとすると、会社負担分と合わせて19万円近く上昇したのである。当然、その分、可処分所得が目減りしてきたわけだし、会社は何もしなくても社会保険料負担が増えるので、賃上げや人員採用をためらってきた。それが昨年秋で「頭打ち」になったのである。可処分所得の減少が止まれば、消費も底入れしてくる可能性がある。

 財務省が公表している「国民負担率」を使って国民所得から逆算すると、社会保険料の負担は2004年度の52兆1800億円から2015年度の66兆9800億円へと、14兆8000億円も増えた。消費税率1%の引き上げで2兆数千億円の税収増に当たるとされるので、消費税6~7%分の負担が知らず知らずの間に増えていたわけだ。消費が盛り上がらなかったのは当然だったとも言える。

 2019年10月には消費増税が控えている。あと1年あまりだ。増税が迫れば駆け込み需要も期待できるが、一方で、その後の「反動減」も予想される。現状の消費が盛り上がらないまま消費増税に突入すれば、またしても消費が腰折れし、再びデフレの泥沼に迷い込むことになりかねない。

 消費増税後には2020年の東京オリンピック・パラリンピックが控えており、訪日外国人による「超過消費」が期待できる。旅行で日本を訪れる外国人は免税手続きで買い物をするので、消費増税の影響は軽微だ。2018年6月時点でも百貨店売上高の5.8%を免税売上高、つまり訪日外国人によるインバウンド消費が占めている。この割合はさらに高まるだろう。

 だが、インバウンド消費があるから増税しても影響は軽微とは言い切れない。日本国内の消費が落ち込めば、「経済好循環」は振り出しに戻ってしまう。

 政府は「消費税還元セール」の解禁や、増税後の経済対策などで、増税の影響を小さくしようと知恵を絞っている。だが、問題は増税しても消費が腰折れしないだけの消費の「勢い」を、増税前にどれだけ作っておけるかにかかっている。むしろ、増税前の経済対策こそ必要だろう。

 あるいは、増税前に思ったほど消費が盛り上がらなかった場合、消費増税を撤回することも必要になるかもしれない。増税ありきで景気を失速させれば5年にわたるアベノミクスの成果が一気に雲散霧消する危険性をはらんでいる。