「マイナス金利」効果で現在、新設住宅着工は好調

 日本銀行が今年2月に導入した「マイナス金利」の効果がジワジワと効き始めているとみて良さそうだ。住宅ローン金利が史上最低水準に下がったことで、住宅を買う動きが広がり始めた模様だ。また、都市部を中心にマンション価格が上昇していることから、買い替えを誘発しているようだ。

 これまでなかなか増加しなかった福島県など東日本大震災の被災地域でも住宅着工が増えている。震災から5年を経て、ようやく本格的な住宅再建が始まったとみることもできそうだ。

 野村総合研究所は6月、2030年度の住宅市場に関する予測を発表した。それによると今年度以降、住宅着工は右肩下がりで減り続け、2030年度には54万戸にまで減るとしている。人口減少が大きく影を落とすという見方である。

 現在820万戸ある空き家は今後急増。2033年には2167万戸になるとしている。総住宅数を7126万戸(現在は6063万戸)とみており、空き家の比率は現在の13.5%から30.4%に高まるとしている。

 仮に予測通りの住宅着工が減り続けると、経済へマイナスのインパクトは大きい。逆に言えば、名目GDP600兆円を目指すには、住宅着工の減少に歯止めをかけ、増やすための政策が不可欠になる。

人口減少を見据えて、住宅政策は発想の大転換が必要

 人口が減少する中で、住宅政策は発想の大転換が必要だ。これまでは持ち家比率を上げることに重点が置かれ、小規模の住宅を大量に供給する視点で政策が組み立てられてきた。空き家や空き地が増える中で、今後は、既存の住宅を建て直して大きくさせる政策が不可欠だ。

 従来、一定規模以下の住宅の固定資産税を軽減するなどの措置が取られてきたが、逆に一定規模以上部分に対する固定資産税の税率を低くするなど、大規模化を促進することが必要だ。また、隣接する空き地を取得した場合に税金を優遇するなど、積極的に規模を拡大していくことである。

 安倍内閣の閣僚のひとりは、「それではカネ持ち優遇政策だと批判されてしまう」と危惧する。誰の目にも「大豪邸」と映るような家に住む人を優遇する必要はないが、「ウサギ小屋」と世界から卑下されてきた住宅事情から今こそ脱出して、国民が豊かさを感じるべきではないか。政府は「住宅面積倍増計画」を堂々と打ち出すべきだろう。

住宅ローンの「ノンリコース化」を実現すべきだ

 さらに、週末住宅を保有した場合の税率軽減など、二軒目、三軒目の住宅取得を促進する政策を打つべきだ。

 また、住宅を取得する際のリスクを大幅に軽減するには、かねてから検討されてきた住宅ローンの「ノンリコース化」を実現すべきだ。ノンリコースは住宅ローンが返せなくなった場合、担保になっている住宅を引き渡すだけで借金全額と相殺されるというもの。日本の現状の住宅ローンの場合、担保不動産を売却してローンが残れば、その返済が必要になる。

 不動産の下落リスクを銀行が負うことになるため、銀行業界は大反対だった。だが、デフレからの脱却で、不動産価格の下落リスクが小さくなっていくと考えれば、今こそノンリコースローンを本格的に導入するタイミングと言えるだろう。住宅取得に関わる経済的なリスクが小さくなれば、より高額の不動産などを買う消費者が増えることになる。つまり、住宅の大規模化にも寄与することになるわけだ。

 現在、日本の住宅の築年数は上昇を続け、老朽化が進展している。これは逆に言えば、建て替えの潜在的な需要があるということである。日銀がマイナス金利政策を本格化させるのと同時に、政府が住宅政策の発想の転換をすることが最大の景気対策になる。