結局、「リニア中央新幹線」などお得意の建設投資へ

 結局、「将来への投資」と言って具体的に安倍首相が触れたのは、リニア中央新幹線の全線開業を最大8年間前倒しする事。さらに、整備新幹線の建設も加速するとした。また、「熊本地震の被災地に『未来』をつくる」とし、復興支援も未来投資だと位置付けた。「自然災害に強い、強靭な国づくりを進め、安心を確保するための防災対策も、『未来への投資』であります」としている。

 7月13日に開いた経済財政諮問会議で民間議員の高橋進・日本総合研究所理事長は、GDPギャップは5兆~6兆円あるとの試算を示した。GDPギャップとは、国の全体の総需要と供給力の差のことで、需要よりも供給力が多い状態を示す。このギャップを埋めるということは、財政出動によって需要を増やすということである。その伝統的な手法が「公共工事」である。

 安倍首相の発言を聞いていると、結局のところ、自民党お得意の建設投資に資金を回す以外、経済対策の規模を大きくする手はないということのようなのだ。

 だが、新幹線や道路、堤防といった建設投資ではなかなか波及効果が大きくならない、というのがここ十年来の問題だ。また、震災復興に建設作業員の人手が取られ、予算を付けても実際には建設工事が進まないという事態に直面している。日本のGDPは6割が「消費」によって支えられているが、公共工事が消費の増加に結びつかないのである。

景気を左右する重要な指標は「新設住宅着工」の戸数

 では、打つ手はないかというとそうではない。

 欧米などで景気を左右する重要な指標とされているのが「新設住宅着工」である。住宅着工が増えれば、それに付随して住宅設備機器や家具、家電などが売れる。自動車やインテリアの買い替えにもつながる。経済的な波及効果が大きいのだ。

 日本の新設住宅着工戸数は1990年代後半のバブル期に年間166万~167万戸が続いたが、その後、大幅に減少してきた。阪神淡路大震災の復興需要が加わった1996年度の163万戸からリーマンショック後の2009年度の78万戸まで実に半数以下になった。その後緩やかに回復、消費増税前の駆け込み需要があった2013年度には99万戸まで回復したが、その後、2014年度88万戸、2015度年92万戸と推移している。

 ここへ来て、この新設住宅着工に明るさが見えている。国土交通省が6月30日に発表した5月の新設住宅着工戸数は7万8728戸。1年前の5月に比べて9.8%増えた。前年同月を上回るのは今年1月以降5カ月連続。しかも、2月7.8%増→3月8.4%増→4月9.0%増→5月9.8%増と月を追うごとに増加率が大きくなっている。

 5月の分譲マンションの着工は微減(0.8%減)だったが、持ち家、貸家、分譲住宅ともに増えている。中でも分譲の一戸建て住宅は18%増と高い伸びを示し、7カ月連続での増加となった。

 今後の焦点は、消費増税前の駆け込み需要が膨らんだ2013年の水準を上回れるかどうか。今年1月までは2013年を大きく下回っていたものの、2月、3月、4月と3カ月連続で上回った。5月は1000戸余り下回ったが、6月以降の数値が注目される。2013年度の年間99万戸にどこまで迫れるかが注目される。

 なぜ、住宅着工が増えているのか。

次ページ 「マイナス金利」効果で現在、新設住宅着工は好調